わが国においてあるべき送配電ネットワークの新しいプラットフォームは、まだまだ議論・政策検討の途上である。一方で再生可能エネルギーや需要側資源はいや応なく増加し、現在の制度では地域によっては早晩、ネットワークの健全性維持すら危うくなりかねない。あるべき電力システムの姿を考えると、送配電側プラットフォームに加えて現在の発電・小売り側のビジネス革新・プラットフォーム形成も重要な鍵となってくる。
 

kWh価値が減衰する時代。欧州企業は革新分野のサービスに進出

 
 2018年10月に次世代技術を活用した電力プラットフォームの在り方研究会が立ち上がり、送配電および新ビジネスのプラットフォームの姿が多面的に議論されている。需要側資源を巡って、どのようなルールメークや需給調整市場設計が必要なのか、データ活用のために必要な制度整備は何か、計量法の在り方など、課題は山積だが、少なくともこれらの将来像について電力デジタル技術による革新が著しい欧州電力市場からの重要な示唆が一つある。それは、送配電ネットワークの革新とともに、エネルギー企業の発電・小売り部門をはじめとするエネルギー事業者自身が非常に重要なプレーヤーとなるということだ。

表_実情_4c
 表1は、欧州大手エネルギー企業(ENEL―ENDESA、E―on、RWE、Centricaほか)のデジタル展開からの示唆をまとめたものである。各社ともEVの充電制御(ENEL)、蓄電池の制御や需給調整市場への入札・運営(E―on)、蓄電池を使った周波数制御ベンチャーへの出資(Centrica)など、規制当局の新しい方針の下、送配電革新分野へのサービスに進出し、大きな利益はまだ上げていないものの、それぞれビジネスとして成長しつつある。

 注目すべきはそうした需要側資源を使って送配電部門の機能強化に貢献するデジタルビジネスは、顧客サービスの拡張にもなる、ということである。電力ビジネスは既に、世界的規模でkWhの価値が減衰するコモディティー化の時代に入っており、継続的に顧客価値を創出し、利益を上げるためには、多様なサービスを創造し続け、顧客に提供するプラットフォームが必要とされるようになってきている。
 

新プラットフォームはイノベーションと深い関係性

 
 現在、国で議論されている、送配電部門で求められる安定供給維持のための需要側資源の活用やデータ集積のプラットフォームの裏側(あるいは表側)には、そこに調整力や配電系統安定化能力をはじめとするサービスを提供して対価を受け取る、エネルギービジネス側のプラットフォームが必要となる。

 つまり、今後の電力システムは、託送料収入でコストを回収する送配電部門が作るプラットフォームと、その安定化に資するDRなどのエネルギーマネジメントビジネスを展開するエネルギー事業者のプラットフォームの二層構造を持つことになる、というのが今後の電力ビジネスの意外な真理である。

図_今後_4c
 そして、今後のエネルギービジネスは一種のプラットフォームビジネスでなければならない。その理由を表したのが図1である。コモディティー化した電気やガスの競争では、差別化が極めて難しくなり、かつエネマネのような単体のサービスでは継続的な競争優位を保つことはできない。これに対して、例えば新たに登場した需要側資源を顧客サイドに置き、その運用サービスを継続的に提案するような連続性のある顧客関係を持つことができれば、顧客のつなぎ止めが可能となる。この顧客との関係維持機能がプラットフォームである。支配力のあるウェブプラットフォームが唯一のプラットフォームである、というのは、GAFAなどのイメージによる誤解にすぎない。

 エネルギービジネスのプラットフォームでは、もちろんP2P取引や環境価値も大きな要素になるし、データ活用も鍵の一つである。すなわち送配電ネットワークの革新と電力・エネルギービジネス全体の革新が深くつながっているのである。

電気新聞2019年4月22日

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