清水建設が保有する世界最大級のSEP船「BLUE WIND」

◆清水建設、世界最大級のSEP船、工期を短縮

 清水建設が“武器”とする世界最大級の自己昇降式作業台船(SEP船)「BLUE WIND(ブルーウインド)」は、クレーンの最大揚重能力が2500トン。日本国内のSEP船としては五洋建設の「CP―8001」(揚重能力800トン)、大林組・東亜建設工業の「柏鶴」(同1250トン)、五洋建設・鹿島・寄神建設の「CP―16001」(同1600トン)に続く4隻目に建造されたが、他の船と比較すると超ド級の大きさであることが分かる。

 ◇最適なサイズに

 清水建設で洋上風力関連事業を統括する関口猛取締役副社長は、ブルーウインドの能力について「出力2万キロワットぐらいまでの風車を想定している」と説明する。これまでに施工した案件は富山県入善町沖で単機出力3千キロワット、北海道石狩湾沖では同8千キロワットだったが、風車の大型化が急速に進展。再エネ海域利用法に基づく洋上風力公募の第2ラウンドでは、1万5千キロワットと1万8千キロワットの風車設置が計画されている。「想定よりも早い段階で、ブルーウインドにぴったりなサイズになってきた」(関口副社長)

 ブルーウインドの建造は、国内企業のジャパンマリンユナイテッド(JMU)が手掛けた。洋上風力に関するサプライチェーンを海外に依存する傾向が強い中で、清水建設は「どうしても国内企業に」とのこだわりを持った。関口副社長は「できる限り日本経済に貢献したいという思いで、他産業に波及効果をもたらせる形にしたかった」と胸の内を語る。

 これまでに動員した入善町、石狩湾、台湾での現場経験を通じて、施工能力の高さを確認。海上の波浪に対する耐久力や、作業一つ一つの効率性など工期短縮に向けて着実に手応えをつかんだ。関口副社長も「圧倒的に有利なノウハウや力が付けられている」と評価。工期は「うまくいけば従来の半分ぐらいにできるのでは」と自信をのぞかせる。

 他のSEP船では作業中断を迫られる厳しい自然条件下でも、問題なく稼働を続けられる。井上和幸社長からは、洋上風力の建設に関して「30%以上のシェアで業界トップに」との期待がかかっている。

◆東洋建設、ケーブル敷設、27年度にも現場へ

 ◇守りから攻めへ

 一方、ケーブル敷設船で巨額投資に踏み切ったのが、海洋土木工事で豊富な実績を誇る東洋建設だ。中期経営計画で示した「守りから攻めへ」という方針を、まさに体現する形で成長投資を決断。約300億円を投じ、国内最大規模となる自航式ケーブル敷設船の建造を進めている。

 船上に容量約9千トンのケーブルタンクを搭載でき、船内には90人が居住可能な空間を設ける。2026年上期に完成予定で、27年度から現場投入する絵姿を思い描く。同社の泉照久執行役員・洋上風力事業本部長は、「世界最高クラスのスペックで、当社の技術力と掛け合わせて競争優位性を発揮できる」と強調。欧州など海外の企業からも問い合わせが多く、関係者の注目が集まる。

 さらに、船上の設備レイアウトを変更することで「ケーブル敷設モード」から「コンストラクションモード」への切り替えが可能。泉本部長は「洋上風力だけでなく、他の海洋開発工事や海底直流送電工事など様々な海上工事に対応できる」と先を見据えている。

電気新聞2024年4月3日