<講演>「欧州におけるGX促進を支えるDX諸施策からの学び」

 ◇Volue会長兼カントリーマネジャー 松本健一氏
 

松本 健一氏

 GXがグリーンな社会を実現するための変革の道のりだとすると、DXはGXを可能にするデジタル・IT技術の革新的活用と言える。ただし、道具でしかないデジタル・IT技術が実効性を持つためには、市場設計と企業のビジネスモデルとの関連付けがなされていることが重要だ。これらを三位一体で考えない限り、せっかくのDXの取り組みも宝の持ち腐れか、糸が切れた凧(たこ)のような結末を迎えかねない。
 GX実現のためには太陽光発電と風力発電のさらなる拡大が不可欠だが、いずれも間欠電源としての課題がある。
 そこで欧州では、発電・蓄電設備の最適運用で需給バランスを取る物理的ソリューション、実需給直前までイントラデイ(時間前)市場を活用するマーケットソリューションが積極的に活用されている。
 その流れの中で、イントラデイ市場に対応して発電・蓄電計画を最適化し、自動で大量の電力取引を行うDXシステムが既に実用化されている。発電・蓄電計画の最適化には、価格予測に基づく発電収入の最大化を狙うものと、必要負荷をカバーするための費用最小化を狙うものの2種類がある。
 欧州では2050年に全電源の50%がコントロール困難な太陽光発電と風力発電で占められるとの懸念もあり、DXの力なしにこうした状況に対応していくのはますます難しくなる見通しだ。Volueとしても、電力需給の指標や価格予測のデータサービス、発電設備・蓄電池の運用最適化、電力取引自動化の各種サービスの展開に力を入れているところだ。