<講演>「激変する環境下での電力ビジネスの挑戦」

 ◇PwCコンサルティング エネルギー産業事業部 上席執行役員 パートナー 立川慎一氏
 

立川 慎一氏

 電力ビジネス環境は激変期を迎えている。脱炭素化と電源の分散化は加速し続け、新たな投資が欠かせなくなった。さらに、既存インフラの老朽化に伴う設備投資は膨らみ、人口減少によって電力需要と売り上げは減少し、業務の担い手は減少すると予想される。この売り上げ減、コスト増、担い手不足の3重苦を解決する手段がDXだ。
 しかし、現時点で企業がDXによる成果を十分に得られているかというと、残念ながらそうではない。電力会社のように歴史ある重厚な企業ほどDX推進に苦労しているのが現状だ。これらの企業には、全社横断でのDX推進に苦労しており、先進的なデジタルツールは導入したものの十分な効果が得られていないという共通の課題認識があるようだ。
 電力業界でDXを成功させるには、業務のデジタル化と同時に人・組織や文化を含む変革を同時に進めなければならない。そしてそのためには企業変革を支援する専任組織「Transformation Management Office(TMO)」をつくり、DXに関する投資やリソース配分の権限、DX戦略から企画、運営管理に至るまでの機能を集約することが有用である。
 変革の浸透度合いは適切なKPI(重要業績評価指標)などで可視化し、不十分な部署では何らかの対策を講じることが重要になる。
 成功体験を水平展開するのはもちろん、失敗を許容しつつ再発を防ぐのもTMOの重要な役割になる。
 人・組織や文化の変革を含むTMOを要としたDX推進により、売り上げ減、コスト増、担い手不足の3重苦を乗り越え、様々な環境変化に柔軟かつしなやかに対応可能な組織を目指してほしい。