電気新聞では9月28日、「GX時代の電力DXを考える」をテーマに「電気新聞フォーラム2023」を開催しました。激流の中にある電気事業の諸課題について、政府関係者や有識者、企業が講演。また、事業者による座談会も行われました。
 電気新聞フォーラム2023の模様を4回に分けて紹介します。
 

<徹底解説>「2024年どうなる電力市場とカーボンプライシング」

 ◇森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士 市村拓斗氏
 

市村 拓斗氏

 2016年の電力小売り全面自由化後に生じた主な課題として、電源(キロワット)と燃料(キロワットアワー)の不足、燃料価格高騰とそれらに伴うスポット市場価格高騰、調整力の未達・調達コスト増加が挙げられる。こうした課題に対処しつつ、カーボンニュートラルへの対応が求められるが、キーワードは(1)中長期の目線(2)確保した電源の効率的な活用(3)バランシングしやすい制度(3)需要家の参加――と考えている。
 中長期の目線という観点からは、電源確保と脱炭素化の両立に向けて、供給力確保の枠組みが整備されつつある。10年を超す長期の需給見通しに関しても政府内で議論が始まっており、その見通しが計画的な電源投資の基礎となる。将来的には電源種別や調整力の必要量に関する検討も必要だ。24年1月に初回オークションが行われる長期脱炭素電源オークションも、今後は長期の需給見通しと整合性の取れた募集が重要になるだろう。
 長期脱炭素電源オークション制度では、脱炭素供給力として重要な既設の未稼働原子力を対象とするかを巡り今後整理される方向に。GX脱炭素電源法の成立を受けて、議論が進むことが期待される。
 内外無差別の卸取引は着実に進められているが、小売事業者の安定的な事業運営や発電事業者の安定した燃料・電源確保の観点から、来年度から開始される中長期契約が重要。低圧部門に存続する経過措置料金規制(規制料金)にも触れておきたい。旧一般電気事業者は燃料価格が上昇局面にあっても、料金の機動的な見直しが困難。新電力としては競争力を失わないよう、規制料金を基準とした料金メニューを提供している事業者が多い。
 内外無差別の卸取引価格もプライスベースで取引されることも多く、その料金を前提とすると、新電力は逆ザヤでの供給を余儀なくされる場合も。内外無差別の卸取引を進め、健全な競争を行うためにも、規制料金は早期に撤廃されることが適切だ。
 卸取引については、供給力(キロワットアワー)と調整力を同時に調達する「同時市場」の議論も進められている。週間から時間前までの短期市場においては、電源を効率的に活用できていないことによる市場価格高騰や調整力調達不足といった懸念、電源のメリットオーダーが成立しにくいといった課題が存在するが、これらを解決し、安定的かつ持続的な電力システムを志向する仕組みだ。
 カーボンプライシングについては排出量取引制度、化石燃料賦課金が順次導入されるが、エネルギー供給構造高度化法上の義務や、既存エネルギー関係諸税などとの関係性が今後、論点になるだろう。

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