CASEのインパクトについて解説した川原英司氏
CASEのインパクトについて解説した川原英司氏

 自動車業界をのみ込む“100年に1度”の変革は電力業界にも波及する――? アクセンチュアはこのほど都内で開いた記者説明会で、通信の高度化や自動化、共有化、電動化といったいわゆる「CASE」のトレンドから導かれる将来展望を示した。電力関連では電気自動車(EV)の蓄電機能を活用する事業機会が増加すると予測。ただ、市場規模が小さい調整力の取引にとどまらない、別の収益源が必要との指摘もあった。

 CASEは、自動車業界に大変革をもたらす4つのトレンドの頭文字を取ったもの。アクセンチュアの川原英司マネジング・ディレクターはCASEにより「モビリティー(自動車関連)業界の顧客、商品、ビジネスモデルが大きく変化する」と指摘した。

 例えば自動運転車であれば免許を持たない人々も移動を「サービス」として利用する顧客となるほか、車自体も“売り切り”ではなく利用料金を支払う形態に移行することが想定されるという。

 電力業界で見込まれる事業機会には、EVと住宅やビルを接続する「V2H」や「V2B」を挙げた。卸電力市場価格に応じて蓄電池を充放電制御し、電力を売買する「裁定取引」も可能と見込む。電力系統に接続して充放電する「V2G」や、その発展形としてVPP(仮想発電所)も紹介した。

 ただ、VPP関係者の間でも調整力の提供が大きな収益につながるかどうか疑問視する声がある。アクセンチュアの藤野良シニア・マネジャーも「(現状の)調整力市場はそれほど大きくない」と指摘。VPPだけではなく別の収益源を見いだせるかどうかが鍵になると分析した。

 可能性としては電力会社がEVを保有し、カーシェアやライドシェアのサービスを提供しながら蓄電池をVPPにも活用する事業も考えられそうだ。藤野氏は電力会社がそうした事業に乗り出す場合は、人材やノウハウといった「ギャップをいかに乗り越えるか」が課題と指摘した。

電気新聞2019年5月29日