需要減と燃料下落で
電力の高需要期を脱し、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場では、価格スパイクがひとまず回避された。2022年度の冬季(12月~2月)のスポット価格は20円05銭(24時間平均)。LNGの不足などで高騰した2年前と比べ3割程度低下した。ロシアによるウクライナ侵攻以後、高止まりしていた燃料価格が下落したことに、需要電力量の落ち込みが重なった。買い入札の傾向にも変化が生じている。(稻本登史彦)
この冬に特徴的だったのが需要の落ち込みだ。電力広域的運営推進機関(広域機関)の統計を基に21年度と22年度の需要電力量を比べると、12月で0.9%減、1月で5.3%減、2月で8.7%減と大幅に減った。電力関係者は「国は節電要請の効果を強調するだろうが、電力料金の高騰によって節電を余儀なくされたというのが実情だろう」と理由を推し量る。
需要の減少に伴い、売り札にも余剰感が強まった。1月の1日平均売り札量は約12億7600万キロワット時と過去最高を更新。買い入札量は例年並みになったため、市場の需給が一気に緩和した。売り切れとなったコマ数も1月は前年同月から192コマ減って19コマだった。
買い入札の傾向にも変化が生じている。電力・ガス取引監視等委員会によると、昨年4月のインバランス料金制度の見直しを契機にそれまで大きな割合を占めていた80~90円の買い札が減少。40~50円の価格帯へとシフトしている。
例えば、「10年に1度」と形容された強い寒波が列島を覆った1月25日には今冬最高価格となるエリアプライス44円43銭を記録。ただ、買い札の価格帯が下がるとともに売り札量の増加もあって、前年同月に比べ低い水準にとどまった。供給力(キロワット)公募で落札した電源が稼働したことも、需給緩和に一定程度貢献したとみられる。
端境期である3月に入ってからも、スポット価格は安値が続いている。1~14日受け渡し分は10円24銭(24時間平均)。市場関係者は「ここまで落ちるかというほどの落ち込み方。夏場を見据えて定期点検が集中する5月頃までは凪(なぎ)の状態が続くのではないか」とみる。
東京商品取引所の電力先物市場では、東エリア・ベースロードの7、8月物は17~20円台で推移しており、電力市場では夏場の需給逼迫は回避できるとの見方が支配的だ。石炭やLNGの調達に影響を及ぼす中国の経済回復がどの程度進むかといった不確定要素もある中、市場関係者は次の冬以降の様子を慎重にうかがっている。
電気新聞2023年3月14日