大手電力各社が低圧規制料金の値上げを相次いで申請する中、今月に入り新電力が追随する動きが広がってきた。燃料費調整に上限が設定される大手電力の規制料金は、現時点で各エリアの最安クラスだが、値上げが実現すれば新電力も価格勝負を挑みやすくなる。新電力各社は採算確保と顧客獲得の両立を目指し、料金プランに工夫を凝らしている。

 低圧規制料金の値上げは大手電力7社が申請し、現在は国の審査を受けている。東北、北陸、中国、四国、沖縄の5社は4月実施、北海道と東京の2社は6月実施を目指している。各社の平均値上げ率は28.08~45.84%とかなり大きく、家庭向け市場では競争環境が戻りつつある。

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 新電力各社は4月の料金改定実施に向けて新たな低圧プランを発表し始めた。東急と東北電力が出資する東急パワーサプライ(東京都世田谷区、村井健二社長)は、「東急でんき」の全プランを実質再生可能エネルギー化した上で料金改定する。基本料金単価や従量料金単価を値上げするほか、燃調も見直す。

 新しい燃調は、独自の算定基準で原油、LNG、石炭の燃料価格を反映する「調整項A」と、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格を反映する「調整項B」の合計で算定する。算定期間はそれぞれ3カ月間。値上げ率は、政府の激変緩和措置を反映する前のモデルケースで約23%に達する。

 イーレックス系のエバーグリーン・リテイリング(東京都中央区、田中稔道社長)は、低圧プランで燃調の代わりに、スポット価格を反映する「電源調達調整額」を導入する。電源調達調整額は3カ月前のスポット月間平均価格に独自の「換算係数」を乗じて送電ロスを補正した額と、独自の基準単価の差を追加請求または還元する。基本料金と従量料金は現行の単価を維持。モデルケースでは約28%の値上げとなる。

 楽天エナジー(東京都世田谷区、鈴木和洋社長)は、「楽天でんき」の従量料金単価を値上げする。東京エリアで月間使用量300キロワット時の場合の試算では、約29%の値上げとなる想定だ。ただし、スポット価格を反映する「市場価格調整額単価」に上限を新設するほか、楽天ポイントの進呈率を最大2倍に引き上げる期間限定キャンペーンも展開する。

 シナネン(東京都港区、安田貴志代表取締役)は低圧プランで料金改定する。最低料金制を導入した上で、従量料金や環境配慮料金の単価を改定。燃調を大手電力の「高圧・特別高圧」の燃調に合わせ、電源調達価格の変動に対応するための「調達調整額」も導入する。具体的な算定根拠は非公表。1年間固定で年度ごとに見直す。

 「auでんき」を提供するauエネルギー&ライフ(東京都千代田区、梶川秀樹社長)や、「コスモでんき」を供給するコスモ石油マーケティング(東京都港区、森山幸二社長)も、規制料金の値上げが認可され、大手電力各社の新しい料金体系が確定したタイミングで「規制料金等と同等の料金に見直す」「それに準じた料金体系への改定に踏み切る」と追随値上げの方針を公表している。

 足元では、化石燃料価格とJEPXスポット価格が低下傾向にある。新電力各社は今後も、値上げ申請に対する国の審査の動向などをにらみつつ、料金戦略を練ることになりそうだ。

電気新聞2023年2月21日