都道府県別に抵抗率を地図に表示できるようにした
都道府県別に抵抗率を地図に表示できるようにした

 アース関連メーカーのホクデン(富山県立山町、戸栗和広社長)はきょう10日から、同社ウェブサイトで全国の大地抵抗率を都道府県別に表示できるようにした「接地マップ」の無償提供を開始した。1969(昭和44)年に旧通産省の特別委員会がまとめた全国の大地導電率調査の地図を基に、同社がカラーでデジタル化。接地工事業者向けに「大まかではあるが、工事対象地域の大地抵抗率を事前に把握できるようにした」(戸栗社長)。同社はマップの活用を広く呼び掛けている。

 発電所、変電所、送電・配電をはじめ、ビル、工場、鉄道、空港など、あらゆる電気設備で接地工事が必要になる。その際、法令や規格・基準などにより接地抵抗値が定められており、低いほど良いとされる。基準値を超える場合は、電極や低減剤による対策が必要になるが、抵抗値は、それぞれの地域の地盤・地質により異なっており、低減対策は一律ではない。
 
 ◇データを現在に
 
 電性コンクリート接地電極の製造を手掛ける同社には、電工会社などから「接地工事で何をしていいか分からない」といった不安の問い合わせが多く寄せられるという。まずは対象地域の大地抵抗率を大まかにでも把握しておく必要があるが、施工業者が手軽に入手できるデータがなかった。

 戦後の高度経済成長期は、電力需要の増大に対応する全国的な送電網整備が急務だった。一方で送電線の電磁誘導障害(ノイズ)への接地対策も求められており、当時の通産省は電力9社と電源開発、国鉄、電電公社、大学が参加する誘導調査特別委員会を設置。地質学の専門家も加わり、沖縄を除く全国の大地導電(抵抗)率の大規模実地調査を行い、69年に地図データとしてまとめた。

 国家プロジェクトともいえる50年前の調査に、戸栗社長は「データの精度は現在に通用するレベル。これほどの大規模調査は、この先も実施できないのではないか。当時の地図を活用しない手はない」と、デジタル化に着手。計画から約3年をかけ、1メートル当たりの大地抵抗率を6段階に色分けし、一部加筆して当時のデータを日本地図に落とし込んだ。さらに都道府県(沖縄除く)ごとに地図を閲覧できるようにトレースし、使い勝手も向上させた。
 
 ◇“遺産”を誰でも
 
 パソコン、スマートフォンで「ホクデン」を検索し、同社ウェブサイトから誰でも閲覧できる。戸栗社長は「携帯の基地局、空港、鉄道、工場、家庭と、接地工事の精度向上ニーズは高まっている。電気設備のあるところ接地は必要なのだから、先人たちの偉大な“遺産”を分け隔てなく提供することは社会的意義も大きい」と強調する。

 同社は全国数万社の施工業者などにダイレクトメールを送り、ウェブ版「接地マップ」の利用を呼び掛ける方針だ。

電気新聞2020年3月10日