政府は、エネルギー政策の方向性を大局的な見地から議論する新たな会議体を立ち上げる。未来投資会議(議長=安倍晋三首相)の下に、環境・エネルギーに特化した有識者会合を設置。化石燃料や再生可能エネルギーの扱い、投資環境の整備などについて、コストや安定供給の視点を踏まえつつ検討する。具体的な期限は設けず、産業界や有識者から幅広く意見を募る。

 5日の未来投資会議で方針が示された。同会議では毎年夏頃に成長戦略を策定しているが、これに盛り込むことは想定せず、期限を区切らずに議論を進める。そこで示された方向性は総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)などの場で、具体化を図ることにしている。

 環境・エネルギー分野を巡っては、昨年の台風15、19号被害に象徴されるように自然災害の脅威が年々高まり、地政学リスクも顕在化している。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などデジタル技術の普及も、今後拡大が予想される。足元では再生可能エネルギーの導入拡大と、それに伴う送配電網の整備が急務になっているほか、電源投資の環境整備も課題の一つになっている。

 新たな会議体では、こうした観点を踏まえ、エネルギー戦略全体の方向性を示す。気候変動問題やそれに関連したESG(環境、社会、企業統治)投資の拡大、安定供給、各電源のコスト比較など総合的に勘案し、バランスのとれた政策につなげられるよう議論を深める。二酸化炭素(CO2)削減目標やエネルギーミックス(2030年度の電源構成)といった数値の見直しには踏み込まない見通し。

 会議体の創設を巡っては、産業界を中心に強い要望があり、これらに応えた格好だ。日本経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は、第5次エネルギー基本計画の策定作業の段階から、原子力など「国民的議論の場」を立ち上げる必要性を強調。国が主導的な役割を担うよう、再三にわたって求めていた経緯がある。

電気新聞2020年3月6日