サンプル出荷を始めた1700V耐圧のIGBTモジュール
サンプル出荷を始めた1700V耐圧のIGBTモジュール

 富士電機は30日、大規模な風力発電システム向けにパワー半導体の品ぞろえを拡充すると発表した。第7世代IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)モジュール「Xシリーズ」に1700V耐圧製品を追加し、サンプル出荷を始めた。発熱の抑制により出力電流を従来に比べ最大30%増加でき、機器の小型化やコスト低減に寄与する。同社は産業用モジュールの売上高を2023年度までに18年度比26%増を目指す。

 IGBTモジュールはモーター駆動用インバーターや無停電電源装置(UPS)、太陽光・風力向けパワーコンディショナー(PCS)といった機器に搭載される。

 サンプル出荷を始めた1700V耐圧製品は、欧州や中国を中心に拡大している大規模風力関連の需要を狙う。

 モジュールは通電のオン・オフを行うIGBT素子と還流機能を持つダイオード素子(FWD)をパッケージ化したもの。新製品はIGBTとFWDを薄くして表面構造を微細化した。第6世代の製品に比べ、インバーター動作時の電力損失を約10%低減している。

 モジュールは新たに開発した絶縁基板を使い、放熱性も向上させた。連続動作時に耐えられる温度を競合製品の150度より高い175度とし、搭載機器のサイズを維持しながら出力電流の増加を実現。価格は第6世代の製品と同等か、それ以下で提供する。

 世界的な再生可能エネルギーの普及と共に、PCSなどに搭載される産業用IGBTモジュールの需要も増加している。富士電機の推計によると、同モジュールの市場規模は18年の約3500億円から、年率3.5%の成長が見込まれるという。

 その牽引役になるのが風力発電で、海外では単機容量、1地点当たりの規模共に拡大している。

電気新聞2019年7月31日