◆【論点2】GXの潮流

 ◇系統安定化の対価、火力に 渡部氏/◇脱炭素電源、柔軟な制度を 松尾氏
 

 司会 政府の「GX実現に向けた基本方針」では、原子力の最大限活用、火力の脱炭素化などが示された。

 

 小川 脱炭素と安定供給の両立のためには、原子力の活用が不可欠であり、既設原子炉の運転期間に関するルールや、次世代炉の社会実装を目指す方針が示されたのは意義深い。次世代炉の建設には国民理解の醸成や規制基準整備、巨額の資金調達など、様々な課題に対応していく必要がある。こういった課題を官民で一つ一つ解決していくことが重要。また、今後カーボンニュートラルを目指す中で、今以上に電力需要が増加する可能性がある。国には、今後必要となる電源投資規模の見通しを示すとともに、それに必要な電源投資がしっかりファイナンスされる環境の整備を期待したい。

 

 司会 JERAの取り組みや問題意識は。

 

渡部 哲也氏

 渡部 再エネ主力電源化を目指すには、調整力や慣性力を提供する火力の役割は重要。一方で、頻繁な起動・停止など過酷な運用を強いられ、設計上の条件よりも取り替え周期が短くなるなど、維持コストが上昇する傾向にある。こうしたコストはネットワーク全体の安定性を維持するには必要な費用。その対価の在り方については検討していただく余地があるのではないか。火力の脱炭素化に向けては、長期脱炭素電源オークションの制度化により固定費回収の予見性は高まったが、アンモニアや水素は既存燃料と比べて割高。可変費についても値差補填制度の具体化に期待したい。

 

 司会 50年までの時間軸を考えると不確実性を伴う。GX実現の課題をどう見るか。

 

 松尾 現在の経済社会体制と、カーボンニュートラルが実現された社会とでは、大きな断絶がある。完全な脱炭素化を実現できた文明は存在せず、人によってカーボンニュートラル社会のイメージは異なる。産業政策と足並みをそろえることも重要。カーボンニュートラル時代の電源確保については、長期脱炭素電源オークションによって、電力システムに必要な電源が、必要な場所に、必要な量を確保できるのか、憂慮している。今後、入札結果を見て検証を行い、柔軟な制度変更も求められるのではないか。

 

 司会 送配電事業者は従来と異なる課題に直面するのではないか。

 

山本 竜太郎氏

 山本 EV(電気自動車)や蓄電池など分散型リソースにより系統運用の複雑さは増すが、調整力として活用するなど、電力ネットワークに上手に取り込んでいく。系統整備の面では、電力広域的運営推進機関(広域機関)が策定したマスタープランで、海底直流送電線などの敷設計画が示された。接続先となる地内基幹系統の整備と一体で進めることも重要。我々としては蓄積した技術的知見を活用して検討に協力していく。費用負担の在り方の検討を引き続き国にはお願いしたい。

 

 司会 需要側リソース活用に向けてエナリスが提供できることは。

 

 都築 分散型リソースを束ねるアグリゲーションビジネスはさらに重要になるだろう。当社は早くからVPP実証に取り組んでおり、その知見を提供できる。再エネについても発電事業者向けアグリケーションビジネスを展開している。追加性のある再エネを必要とする企業とマッチングするオフサイトPPA(電力購入契約)も提供し、再エネ拡大を支えたい。

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