コンパクトで設置しやすいOPT100

◆変圧器絶縁油のガス遠隔監視/保守フリー 多岐に検出

 OPT100は変圧器内の絶縁油に含まれるガスを遠隔監視する製品だ。ガスの成分を正確に分析することは変圧器の健全性の把握につながり、改修・交換時期の判断材料となるほかトラブルを未然に防ぐことにもつながる。検出できるガスはメタン、エタン、エチレン、アセチレンといった炭化水素のほか、CO、CO2、水素、水分と多岐にわたる。
 OPT100の強みはメンテナンスフリーであることだ。絶縁油中ガス検出装置は半透膜を使ってガスを取り出すヘッドスペース法によるものが主流だ。半透膜は消耗品であるため、3~5年に1回は交換しなければならない。また一部メーカーはガスクロマトグラフィーを用いるが、定期的にキャリアガス(試料)のボンベを替える必要がある。
 これらに対して、OPT100は真空抽出法を採用。半透膜をはじめ交換が必要な部品や消耗品を使用しない。シリンダーを絶縁油で満たしてからポンプで油面を下げると上部に真空ができる。この真空部分に油を噴霧して溶け込んだ異常ガスを抽出する仕組みだ。
 真空にするために使う磁気式駆動ポンプが唯一の可動部品となる。このポンプの寿命は製品自体の耐用年数と同じく15年以上を確保している。
 さらに製品全体が防塵防水性能を確保しており、外気の酸素や水分が内部に侵入せず、変圧器内部の絶縁油を汚染するリスクもない。国際電気標準会議(IEC)、JIS(日本産業規格)で定められる電気機器内への異物の侵入に対する保護等級(JIS C0920)は、強風による粉塵が内部に入らず、豪雨でも浸水の恐れがないIP66クラスと評価されている。極寒地から熱帯まで場所を問わず作動可能であり、過酷な設置環境にも対応する。

 ◇優れたUI
 ヘッドスペース法では絶縁油中に含まれる異常ガスの抽出は15~30%程度にとどまるという。これに対し、真空抽出法は90~99%という高い抽出率を実現している。
 真空抽出された異常ガスは赤外線(IR)センサーで分析する。他のメーカーが利用する光音響法は赤外線を異常ガスに照射した後の透過率を見る。この手法だと赤外線の光源が劣化するのに比例して、透過率も下がる。結果としてメーカー側が定めた異常ガス発生のしきい値を下回る計測値が出てしまい、アラームが鳴らない可能性が生じる。
 OPT100は、ガスありとガスなしの透過率の相対値を測る。これによりドリフトが補正され、正確に異常ガスを特定できる上、光源が劣化しても正確な測定値を確保できる。
 ヴァイサラはOPT100にマイクログローという自社開発の光源を搭載している。同社はマイクログローを10万台以上試験し、15年以上経過してもIRセンサーの性能が維持されることを実証している。
 統合されたウェブユーザーインターフェース(UI)も特長の一つだ。ソフトウエアを追加する必要はなく、現場に適した設計により素早く設置できる。オイルパイプを接続して、電源を投入し、ユーザーインターフェースに接続し、機器からの指示手順に従い作業を行うことで完了する。停電があった場合も自己診断機能により自動的に動作を再開する。

OPT100が活用される中国三峡集団の洋上風力発電所

 ◇各国で実績
 OPT100は、世界各国で納入・利用実績を持つ。フィンランド国営送配電運用会社のフィングリッドは、送配電用変圧器の状態監視にOPT100を活用している。
 アルゼンチンとウルグアイの国境に位置し、両国によるCTM(合同技術委員会)が管理するサルト・グランデ水力発電所では10万VA油強制空圧(OFAF)発電所用昇圧変圧器(GSU)で起きていた過熱について、OPT100を利用することで原因を突き止めることができた。
 中国三峡集団は、大連市海域で手掛ける洋上風力発電所の洋上変電施設に2台のOPT100を導入した。アクセスが難しく時間がかかる同施設を遠隔で、リアルタイム、正確に監視。それにより作業員が現場に向かう機会を減らし、発電設備の稼働率向上、経済的運用に貢献している。

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