フィンランド計測機器メーカーのヴァイサラが開発・販売する「Optimus絶縁油中ガス・水分オンライン監視装置OPT100」(OPT100)は、その正確性や運用のしやすさから世界各国で変圧器の状態監視に活用される。国内でも適用事例が増加する中で、重電メーカーでは、東光高岳が各種センサーを組み合わせた電力機器メンテナンスのスマート化の研究の中で変圧器絶縁油中の溶存ガスや油中水分を連続監視できる同装置を適用し、変圧器の異常を早期に把握するだけでなく、劣化の予兆を捉えて保全につなげる取り組みを進めている。それらの取り組みをリードする両社の技術者3氏による対談を通じ、OPT100の特長と進化する保全の今を紹介する。

栗原 二三夫氏/東光高岳 戦略技術研究所 技術開発センター副センター長兼材料技術グループ材料技術部長

<高精度が採用の決め手/栗原氏>

 ――東光高岳では、ヴァイサラ製品はどのように活用されているのでしょうか。また、導入経緯は。
 出井 当社小山事業所は変電所設備などの電力機器を中心として製造している事業所です。我々はお客さまへ、新たな電力機器保守のソリューションを提供すべく、各種センサーを組み合わせた新たな予知保全技術やシステム化技術の検討を実施しています。その中で、変電所内の重要設備である変圧器に対し、複数のセンサーを使用した連続監視による新たな状態診断技術を研究しています。その中で、ヴァイサラのセンサーであるOPT100を活用しています。
 栗原 約6年前に基礎検討を開始して、まず実験室で検証を行い、基本構想実現の確証を得た上で、約4年前に運用中の変圧器に設置し始めました。

 ――連続監視はなぜ必要なのでしょうか。
 出井 変圧器監視は、定期点検の際に現場に出向き絶縁油のサンプルを取り、持ち帰り、専用の分析装置で成分を測定して、状態を診断するのが現在の主流です。診断は間欠的になりますし、手間と時間を要するのですが、変圧器にセンサーを取り付け、データを連続かつ遠隔で監視することでこれを克服することを狙いました。現在、国と民間が協力して、設備の高経年劣化による不具合発生のリスクや少子高齢化に伴う電気主任技術者不足や技術伝承力の低下など電力事業を取り巻く環境変化への対応が求められている課題に対し、デジタル化で解決を図る「スマート保安」の普及を進めています。そうした流れにも沿った取り組みといえます。

出井 和弘氏/東光高岳 戦略技術研究所 技術開発センター材料技術グループ課長

<保安スマート化目指す/出井氏>

 ――様々なソリューションの中で、ヴァイサラ製品を選んだ決め手は。
 栗原 一番は我々が旧来、絶縁油油中ガス分析で着目してきたアセチレンや、我々の研究で必要とする油中水分といった成分が精度よく分析できるという点です。

 ――ヴァイサラとしてもそこは強みと捉えていますか。
 荒井 異常ガスを全て測れることに加え、半透膜などの消耗品を一切使用しないため、設置してしまえば基本的にメンテナンスフリーであることも強みと認識しています。設置自体も簡便と考えているのですが、東光高岳の皆さんとして工程はいかがでしたか。
 出井 既設変圧器は排油弁を利用するのですが、油の行きと戻りの配管を取り付けるだけで設置できました。
 荒井 通常のセンサーは配管内を真空にしてはじめて油が流れます。これはかなり手間となるのですが、当社製品の場合は配管をつないで頂ければ、あとは自動で空気を外に出し油の循環が始まります。そういうところも自信を持っています。

荒井 良隆氏/ヴァイサラ 産業計測営業本部 リージョナルビジネスデベロップメントマネージャー

<重電の実績、知見に信頼/荒井氏>

 ――一方で、導入プロセスは丁寧に進めました。
 出井 実験室で約2年間検証をした上で、フィールドで実際に変圧器に取り付けて使うという2段階のステップを踏んだので多少時間がかかりました。
 栗原 従来の分析装置の分析結果を突き合わせて検証を積み上げ、十分使える精度があるという判断をした上で実器に導入しました。完成された製品なので設置すれば数字は出るのですが、果たしてそれが信頼できる数字なのか、従来の我々がやってきたことと同様に扱えるのか。そこを重視しました。
 出井 設置時にはヴァイサラの技術者に来て頂いたり、不明点についてはすぐに答えが返ってくる状況を作って頂いたので、かなりスムーズに進められたと思います。
 栗原 かなりしつこく質問もしましたが、真摯に対応頂けたのはすごくありがたかった。
 荒井 当社としても、変圧器メーカーで実績があって知見がある方が、評価をして採用して頂けたのはありがたかったです。機器に自信はありますが、信頼できる会社にきちんとテストして頂くことは重要と考えています。

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