沖縄電力新本館(中央)とエネルギーセンター(右)の完成予想図

 沖縄電力の総合エネルギーサービスが新局面を迎える。建設中の新本館(浦添市)に2022年3月にエネルギー供給施設を併設し、電気と空調用の冷水を複数の建物にまとめて供給する計画が進んでいる。県内のエネルギー需要の増加と事業者間競争の激化を受け、沖縄電力は顧客施設に電気、ガス、熱を最適な形で供給するサービスに力を注いできた。個々の施設への供給から、複数の施設にまとめて効率よく供給する事業モデルに踏み出し、県内の大規模開発の需要を獲得していきたい考えだ。

エネルギーセンターの建設を発表する沖縄電力の本永社長(中央)。左はREOの仲里社長、右はゆがふホールディングスの前田貴子代表取締役CEO代行(7日、那覇市)

 10月7日に本永浩之社長らが那覇市内で会見し、22年4月完成予定の新本館の隣に建てる「エネルギーセンター」の概要を発表した。受変電設備、常用・非常用発電機、ターボ冷凍機などを備えている。電気と冷水は新本館だけでなく、ゆがふホールディングス(名護市、前田裕継代表取締役CEO)が新本館の近くで22年8月に開業する複合ビルの2施設に供給する。

 個々の施設がエネルギー設備を保有する場合に比べ、エネルギーセンターには大型で高効率な設備を備えられるため、省エネルギーとコスト削減の深掘りが見込める。非常用発電機も設置し、災害時の施設のBCP(事業継続計画)機能も強化した。本永社長は会見で「エネルギーセンターは、総合エネルギー事業の象徴的なモデルになる」と強調した。

 電気と冷水の供給は、沖縄電力子会社のリライアンスエナジー沖縄(REO、浦添市、仲里武思社長)が担当。複合ビルには子会社のプログレッシブエナジー(PEC、中城村、湊好男社長)がガスも供給する。

 足元では新型コロナウイルス感染拡大の悪影響があったが、沖縄県のエネルギー需要は中長期的にも堅調に伸びる見通しだ。人口の増加や、県内各地で大型施設の建設計画、基地返還跡地の開発計画があることが、その見通しを支えている。

 電力・ガス小売りが全面自由化されている中で、エネルギーの需要の増加を見越し、沖縄県には本土から複数の新電力やエネルギー供給事業者が参入。競争が激しくなっている。高圧分野の新電力のシェアは年初時点で12%を上回った。

 この状況に対し沖縄電力は電力の販売に加え、PECが手掛けるガス供給、REOが17年から取り組むESP(エネルギー・サービス・プロバイダー)事業を柱とする総合エネルギーサービスを推進。総合力で競争に打ち勝つ考えだ。ESP事業は顧客の初期投資ゼロで、エネルギー供給に関わる一切の業務を請け負う。競合先の攻勢は激しいが、REOはこれまで大手スーパーのサンエーなど5件の顧客施設にサービスを提供している。

 集積した施設への「面的」なエネルギー供給は、堅調なエネルギー需要のもとで、今後も大規模開発が続くことを見据えた一手だ。本永社長は会見で「大型の商業施設や基地返還跡地の開発で、新しいエネルギー需要が生まれれば、面的供給の事業モデルを横展開できる」と指摘した。

電気新聞2020年10月8日