◆英国の洋上風力

 ◇競争力向上へ、保守の最適化が鍵

英国での洋上風力発電プロジェクトのライフサイクル
英国での洋上風力発電プロジェクトのライフサイクル

 英国は、2030年までに洋上風力発電を最大3千万キロワットに増やす目標を掲げている。既に、政府主導による開発海域の入札を00年から3回にわたって実施し、既に40のウインドファーム、約千キロワットの洋上風力が稼働している。電力を買い取る制度として導入された差額決済契約(CfD)は、契約期間(通常15年)の間、入札で決めた固定価格と市場価格の差額を政府が補填する仕組みだ。

 洋上風力の発電コストは着実に低下した。設計・建設から廃止までの総コストを操業年数で割ったLCOEは、12年に千キロワット当たり150ポンドだったが、17年には80ポンド以下に半減。最新の入札では、23~24年の供給分で39.65ポンド、24~25年の供給分で41.61ポンドという記録的な低入札になっており、デベロッパーとオペレーターが23~25年にこのレベルのLCOEを目指していることを意味している。

 コスト低下の背景にはタービンの大型化があり、当初の3千~4千キロワットからドッガーバンクで使用される1万2千キロワットに増加。より少ない基数でより多くの電力を供給することが可能になった。さらに、運用・保守コストの低減も加速している。状態監視・予知保全技術の設計段階での組み込み、トラブルシューティングの改善により、過去4年間で洋上施設へ行く回数が半減した。加えて、保全計画やロジスティクスの改善、デジタル技術によるプロセス自動化、保証期間後の契約の最適化、および保守資材のサプライチェーンの改善も進んでいる。

 設計段階から運用効率と保守性を考慮することは、今後ますます重要になる。運用段階は、ライフタイムの約70%、LCOEの約40%を占める。遠隔監視、ロボットやドローンの自律制御による定期的な検査プロセスの自動化など、さらなる保守の最適化を進められるかが競争力向上への鍵を握る。

◆賢明なピボット

 ◇変革迫る「5つのD」/中核事業と相乗効果を
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 急速なデジタル化の流れの中、企業は転換点を迎えている。業界を変える「ディスラプション(創造的破壊)」に立ち向かうため、迅速かつ積極的な行動と、継続的なイノベーションが求められている。

 だが、新規事業や事業転換は容易ではない。アクセンチュアが「賢明なピボット(事業転換)」と名付けたデジタル戦略は、既存の事業を捨てずに成長機会を追求するための道しるべとなる。

 戦略の出発点は、中核事業を強化すること。それによって新規事業に必要な投資能力を確保すると同時に、組織を挙げてイノベーションを推進できる体制を構築する。そこから優れたアイデアは外部の力を借りて早期にサービス化し、中核事業との相乗効果につなげるという流れだ。

 エネルギー業界は、自由化、脱炭素化、分散化、デジタル化、人口減少という「5つのD」を背景に変革を迫られており、火力・原子力発電、再生可能エネルギーの電源を跨いだ発電事業の改革や蓄電技術との統合など新たな変革の時期を迎えようとしている。

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