新型コロナウイルスの影響が、エネルギー関連市場に波紋を広げ続けている。世界エネルギー機関(IEA)は2月の石油市場月報の中で、2020年第1四半期は前年同期比で10年ぶりの下げ幅を記録するとの予測を示した。LNG(液化天然ガス)価格も、既にアジアでの需要の収縮から弱含みとなっている。発電設備の生産についても、工場での製造から設置・稼働までのリードタイムが短い再生可能エネルギー関連などで影響が出始めている。

 IEAの月報によると、新型ウイルスを原因とする中国経済の停滞で石油需要が大幅に収縮。20年第1四半期は1日当たり需要が前年比43万5千バレル減少すると予測する。これは10年ぶりの下げ幅という。「通年の需要の成長見通しを日量36万5千バレル引き下げ、日量82万5千バレルとした。これは(東日本大震災があった)11年以来の低い水準」としている。
 
 ◇材料供給に支障
 
 また、SARSが流行した03年と比べ、世界の需給構造の中で、中国の占めるポジションが大幅に拡大していると指摘。イラン司令官暗殺を巡り緊迫化した中東情勢すら影響が少なかった原油価格が、新型ウイルスの出現以降、急激に影響を与えたとしている。

 製造業では、中国から供給される部品の供給不安定化から、各国の自動車工場の稼働に影響が出ているが、発電設備の製造にも影響がおよび始めた。複数の海外メディアによると、太陽電池モジュールメーカーは既にウエハーとガラスの需給逼迫に直面するという。太陽電池関連産業が集積する中国の複数の省で、春節連休を延長した影響とみられる。

 韓国メディアは、太陽電池モジュールで世界シェア上位に入るハンファソリューションズが、韓国内の2工場の稼働を一時休止することを決めたと伝えた。中国から輸入するアルミフレームなどの材料の供給に支障が生じているため。同国を含む海外のメディアは、「生産量不足により太陽電池価格が急騰する可能性がある」との米投資銀行関係者の言葉を伝えている。
 
 ◇風力製造も影響
 
 太陽光発電協会(JPEA)によると、「日本国内の顕著な影響は現在のところ報告されていない」としている。太陽電池モジュールは国内出荷の約8割が海外生産で、中でも中国製のシェアは高い。国内生産も部品の多くを中国に頼る。そのため、「今後も情勢を注視して影響をみていく」としている。

 海外の複数メディアによると、風力設備の製造も影響が懸念されるという。特に、デンマークの風力メーカー大手・ベスタスはブレードとナセル、発電機、制御システムを天津で製造するなど中国依存度が高い。そのため、ヘンリック・アンダーセン最高経営責任者(CEO)は「今年の業績見通しは新型コロナウイルスの影響を踏まえているが、この問題がより長く続く場合、会社が予想したよりも大きな影響を与える可能性がある」と示唆する。「世界の工場」、中国からのサプライチェーン分断は、今後も波紋を広げそうだ。

電気新聞2020年2月18日