日本卸電力取引所(JEPX)は9日、初年度に当たる2020年度受け渡し分のベースロード(BL)取引結果を公表した。沖縄を除く全国9エリアが対象で、約定量は計18万4300キロワットにとどまった。約定価格は8~12円台と、直近1年間のスポット平均価格の前後だった。BL取引では、売り入札価格に電源の固定費を含めることが認められている。さらに、初回だけに売り手も買い手も様子見で売買入札価格が高めに振れ、安値を期待した新電力が買い漏らしたとみられる。

 BL市場では、翌年度のベース需要を賄うために必要なBL電源を固定価格で調達できる。今回は7月30日から入札が始まり、最終日に約定処理された。入札は北海道、東北・東京、西日本の3エリアに分けて行われた。売り手は主に大手電力9社グループとJパワー(電源開発)、買い手は新電力が中心だ。

 約定量は北海道で1万2700キロワット、東北・東京で8万8200キロワット、西日本で8万3400キロワット。年間電力量は計16億1446万8千キロワット時で、新電力の18年度販売電力量の1.3%だった。約定価格は北海道で12円70銭、東北・東京で9円77銭、西日本で8円70銭。直近1年間のスポット平均価格に比べ北海道は1円68銭安、東北・東京は60銭安、西日本は65銭高だった。

 電源の可変費で価格が決まるスポット市場と違い、BL市場への売り入札価格には固定費が含まれ、必ずしもスポット価格より安いとは限らない。ある新電力幹部は「(高めの札を入れた)買い手の行動も影響したのかもしれない」としつつ、「BL電源とは思えない価格水準。これでは競争環境は整わず、制度に課題がある」との認識を示す。

 ATカーニーの筒井慎介パートナーは「BL電源を切り出すという競争政策の上では不発だったが、初回は売りも買いも様子見になるもの。これから買い手がどう動くか、売り手の入札行動を変えるように国が仕向けるのかが焦点だ」と話す。

電気新聞2019年8月13日