一般送配電事業者による最終保障供給の契約件数が減少基調を続けている。電力・ガス取引監視等委員会の調べによると、10月時点の契約件数は1年前のピーク時に比べ約8割減少した。卸電力市場価格の下落に伴って大手電力などが提供する市場連動プランの割安感が高まったほか、新電力が新規契約の受け付けを順次再開して選択肢が広がった。既に最終保障供給にとどまっている経済的メリットはないが、約1万件の需要家が契約中であることも事実。東京電力関係者は「情報を収集できていない需要家も多いのではないか」と推測する。

 最終保障供給の契約件数・供給量の約6割を占める東京エリアでは、東京電力エナジーパートナー(EP)が今月23日から特別高圧・高圧需要家向けの標準的な電気料金メニューの受け付けを約1年ぶりに再開した。

 ◇60億キロワット時目安に

 同社は2022年4月に標準メニューの受け付けを一時停止し、完全市場連動型のプランのみを受け付けていた。その後、燃料価格に加えて卸市場価格の変動分も料金に反映できるようメニューを見直し、同年10月にいったん受け付けを再開したが、23年度向けに用意した年間200億キロワット時の募集枠はわずか3日間で埋まった。

 今回は23、24年度向けに年間60億キロワット時を目安とする追加募集枠(市場連動プランを除く)を設定した。経済産業省・資源エネルギー庁が公表している最新の5月のデータによると、東京エリアの最終保障供給量は約3億キロワット時。その後も減少基調にあるとみられ、契約切り替え需要に対応できる供給力を用意した。

 他社から23年度中の契約切り替えを申し込んだ需要家は早ければ1カ月程度で供給が開始され、年度末の時点で現契約を継続するか新メニューに移行するかを選択する。新メニューは市場価格変動の反映度合いに応じて0%、約30%、100%の3プランに分かれる。この数値が低いほど料金の変動幅は小さくなる。

 ◇募集枠は余裕あり

 今月23日終了時点の受付件数は、他の小売電気事業者や最終保障供給、自社の市場連動プランからの切り替えを合わせて約4千件。募集枠には「まだ余裕がある状況」(法人営業部)という。受付件数の内訳をみると、23年度分と24年度分の割合が約半々。24年度分では市場価格変動の反映率が約30%のプランの申し込みが比較的多い。

 東電EPは「あくまでも推測だが、まだ最終保障供給にとどまっているお客さまも多いのではないか」と指摘する。ただ、料金の変動幅が最も大きい市場連動プランと比べても、最終保障供給にとどまる経済的メリットはほぼないと言える。

 最終保障料金は電力量料金を燃料・市場価格変動に応じて調整した上で、市場価格より安くなる場合は差額を上乗せする。逆に高くなる場合は減額するが、標準メニューの電力量料金単価が下限になる。つまり、市場価格の高騰時はそれに連動して料金が高くなる一方、下落時も安くはならない。例外は、市場価格が高い時間帯の使用電力量が突出して多い場合などに限定される。

 今後は最終保障供給からの契約変更をさらに促すため、小売電気事業者だけでなく経済産業省や一般送配電事業者を含め、もう一段の情報発信強化が求められそうだ。

電気新聞2023年10月27日