公正な変革の実施を訴えたウィルキンソンCEO(左から2人目)

 第26回世界エネルギー会議(WEC)の世界大会が22日、オランダ・ロッテルダムで開幕した。25日までの会期中に150の国と地域から多数のエネルギー関係者の来場を見込む。開幕セッションでWECのアンジェラ・ウィルキンソンCEO兼事務総長は、脱炭素に向けたエネルギートランジション(転換)を進めるに当たり、世界中の人々のエネルギーへのアクセス確保や需要側の視点、人々の行動変容なども踏まえた「公正な変革」を実施していくことの重要性を呼び掛けた。

 WEC発足100周年記念となる今回大会のテーマは、「人類と地球のためのエネルギー再設計」。電化や原子力、再生可能エネルギー、新技術、安全保障といったエネルギー分野を網羅する60以上のセッションを開催する。250人以上に上る各分野の有識者が登壇し、議論を繰り広げる。

 開幕セッションでは、現行のエネルギーシステムの転換と気候変動の早さのギャップを埋めるには、どのような取り組みが必要になるかをテーマにパネル討論を実施。公正な変革に向けて、登壇者からは市民を巻き込んだ政策によってエネルギー消費行動を変えていくことや、需要者側の視点に立った二酸化炭素(CO2)削減策を考えていくことの必要性などが指摘された。

 今回大会の開催地であるロッテルダムは、欧州の「水素ハブ」を目指しており、水素関連セッションの議論にも注目が集まった。

 東京ガスの矢加部久孝執行役員・水素・カーボンマネジメント技術戦略部長のほか、ロッテルダム港湾公社のボードヴァン・シモンズCEO兼COOなど計5人が登壇。水素を取り巻く現状や将来の展望について議論した。

 シモンズCEOは、将来的にロッテルダム港から水素をガスのパイプラインに混ぜて欧州各地に送るという構想を紹介するとともに、グリーン水素の普及に向けて定義や品質の標準化を早急に決定することが必要と訴えた。矢加部執行役員は、水素とCO2から生成する合成メタン(e―メタン)の有効性や戦略などを取り上げた。

 初日の最終盤には、開幕セレモニーも開催。オランダのロブ・ジェッテン副首相兼気候エネルギー政策担当相などが登壇し、今回大会への期待を述べた。

電気新聞2024年4月24日