水力発電設備の新設公募が行われている湯西川ダム


 国が管理する既設の多目的ダムに、水力発電設備を新設する全国初の取り組みが幅広い業界から関心を集めている。国土交通省は3カ所のダムで公募を予定しており、第1弾となった湯西川ダム(栃木県日光市)では16日に現地見学会を開催。地元の関東エリアを拠点とする発電事業者のほか、全国の多業種から関係者が参加。業界や地域を問わず、様々な事業者が参画を検討している様相だ。書面審査や事業者ヒアリングを経て、10月に事業者を決定する。

 国交省は、既設ダムの治水機能向上と水力発電増強の両立を図る「ハイブリッドダム」の取り組みを推進。その一環として、既設ダムへの水力発電設備の新増設を進める。国交省が直轄で管理する湯西川ダムと野村ダム(愛媛県西予市野村町)、尾原ダム(島根県雲南市)で事業化を目指している。

 第1弾となった湯西川ダムの公募は、昨年12月20日に応募受付を開始。年明けの今月16日、事業者向けの現地見学会が行われた。公募を担当する関東地方整備局鬼怒川ダム統合管理事務所の担当者によると、多業界から全国約20社の関係者が参加したという。公募への参加申請は3月14日まで受け付ける。

 湯西川ダムは鬼怒川上流で12年3月に建設された重力式コンクリートダム。堤の高さは119メートル、堤頂長320メートル、総貯水容量は7500万立方メートルで、洪水調節や河川流水の機能維持、都市用水への供給を目的としている。

 最大取水可能水量は毎秒30立方メートルで、新設する発電設備の想定出力は1919キロワット。ダムの放流ルールに完全従属することが条件。発電事業者はダム管理者の当日指示に従い、日々の発電使用水量を調整することが定められる。新発電所の運用開始は30年4月を想定している。

 今回の公募は、商用発電の民設民営方式で事業者を募集。複数事業者によるコンソーシアムでの公募参加も可能で、プロポーザル方式で最優秀提案者を決める。審査は事業遂行能力20点、事業計画50点、地域振興30点の100点満点で評価する。事業期間や売電方法も提案の一部に含まれるほか、非常災害など緊急時の対応についても評価項目に入っている。

 現地では、ダムの管理に必要な電力を発電するための管理用発電所が既設で稼働している。維持流量発電所で出力は350キロワット。新発電所の運用にあたっては、既設発電所の取水を優先することも定められている。

 国交省は今回の公募を通じて、永続的かつ安定的に水力発電を運営できる事業者の参画を期待している。

 一方、発電事業者にとっては、ダム管理者との調整や運用上の制約など様々な条件を踏まえ、事業性を見極める必要がありそうだ。

電気新聞2025年1月22日