
経済産業省・資源エネルギー庁は25日、2040年度のエネルギー需給見通しで、脱炭素技術のコスト低減が進まず、温室効果ガス削減目標(NDC)の13年度比73%減を達成できない場合の電源構成シナリオを示した。火力発電の比率が約45%と最も高く、再生可能エネルギーは約35%とした。温室効果ガス削減量は約61%減にとどまる。こうした不確実性にも備えながら、LNGの確保を含めたエネルギーの安定供給に万全を期す考えだ。
総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)基本政策分科会で提示した。武藤容治経産相は「今回のエネルギーミックスでは新たにリスクシナリオを示した」と述べ、脱炭素技術の導入が進まずにNDCを達成できないシナリオを策定した意義について「エネルギーは国民生活の基盤でもあり、安定供給が損なわれることは決してあってはならない」と意義を説明した。
前回会合ではNDC達成を前提に40年度の電源構成として再エネ4~5割、火力3~4割、原子力2割と示した。総発電電力量は1兆1千億~1兆2千億キロワット時、電力需要は9千億~1兆1千億キロワット時と幅を持たせた。
25日の会合では、その前提条件となる4つのシナリオを示した。再エネ、水素・新燃料、二酸化炭素回収・貯留(CCS)の3技術のどれか一つが普及拡大した状況と、3つとも導入が進んだシナリオに分けた。これとは別に、既存技術の活用が中心となりNDCを達成できないシナリオも提示した。
再エネと水素・新燃料の2シナリオでは再エネ比率が約5割と高い。一方、総発電電力量には差が生じ、再エネ拡大の場合は1兆1500億キロワット時と伸びる。水素・新燃料が普及すれば電化が抑制され、1兆600億キロワット時と5シナリオで最も少なくなる。水素・新燃料とCCSの2シナリオは電力需要が9500億キロワット時と最も少ない。再エネの拡大が限定的となり電力需要の伸びが抑えられる。
NDC未達の「技術進展シナリオ」では、天然ガスの一次エネルギー供給量が40年度時点で約7400万トンと試算。脱炭素技術の開発が進まなかった場合のLNGの重要性を強調した。次世代型地熱発電や次世代革新炉などの技術開発が想定を超えて進展すればNDCの実現も可能とした。
同日の分科会では、第7次エネルギー基本計画の案も示した。委員から賛同を得られ、分科会長に一任された。エネ庁は年内にパブリックコメントを始める方針だ。
原案の文章を一部変更した。GX(グリーントランスフォーメーション)の推進は化石燃料への過度な依存からの脱却に貢献し、中長期的な安定供給にもつながるという文章を追加した。地域の分散型エネルギーリソース活用推進は地方創生にも資すると加えた。水素の項目で、高温ガス炉の技術開発を促進することも追記した。
電気新聞2024年12月26日