GX電源法案を閣議決定

 
 政府は28日、GX脱炭素電源法案を閣議決定した。「GX実現に向けた基本方針」に基づき、安全確保を大前提とした原子力の活用と再生可能エネルギー最大限導入に向けた方策が柱。原子力発電の価値を明確化するとともに、東日本大震災以降の停止期間を最大60年の運転期間から除外。廃炉資金の外部拠出方式も新たに始める。再エネでは北海道~本州間の海底直流送電線を念頭に、着工段階で再エネ賦課金が受け取れるようにする。再エネ事業の規律強化も盛り込んだ。

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 電気事業法、再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)、原子力基本法、原子炉等規制法(炉規法)、再処理等拠出金法(再処理法)の5改正法案を束ねた。原子力関係は公布日から2年以内の施行、再エネ関係は2024年4月の施行を想定する。先に閣議決定したGX推進法案成立後の国会審議が想定される。

 原子力基本法案で、安定供給や脱炭素の貢献など原子力利用の価値を明確化。バックエンドの加速化など、国と事業者の責務も書き込んだ。再処理法案では一般廃炉を着実に進めるため、使用済燃料再処理機構に全国の廃炉の総合調整業務などを追加した。

 「40年超運転」の枠組みは大きく変わる。事業者は炉規法、電事法両面で認可を得る必要がある。炉規法改正案では、現行の運転延長認可と高経年化技術評価を「長期施設管理計画」に一本化。運転開始後30年を超えて運転しようとする発電所は、10年以内に設備の経年劣化に関する評価を行う。その結果に基づき今後の劣化状況を管理する同計画を策定し認可取得を義務付ける。
 

運転期間の除外、「未申請」も対象

 
 電事法改正案では運転期間を40年としつつ、当該発電所の脱炭素への貢献や事業者の自主的安全性向上策などを審査した上で、経済産業相が20年の運転延長を認可する。その際、東日本大震災以降の(1)規制変更に伴う停止期間(2)行政指導に協力して事業者が停止した期間(3)取り消しがあった仮処分命令で停止した期間――などを20年から除外する。

 具体的な審査基準は法案成立後、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)などで詰める想定。経産省幹部によると、規制変更に伴う停止と判断されれば未申請プラントも期間除外の対象になる。新規制基準策定前のストレステスト(裕度評価)による停止も対象になり得るという。11年5月、当時の菅直人首相の要請による中部電力浜岡原子力発電所の停止は(2)に該当する。東京電力柏崎刈羽原子力発電所に出された核燃料移動禁止命令の期間は除外されない。

 再エネ関係では、海底直流送電線などの送電線整備計画を経産相が認定。事業者には従来の運転開始後に加え、着工段階で再エネ賦課金が交付される。認定計画は、電力広域的運営推進機関(広域機関)から資金の貸し付けを受けられる。再エネ事業者が関係法令に違反した場合、既に支払った再エネ賦課金の返還命令なども出せるようになる。

電気新聞2023年3月1日