新電力の間で太陽光余剰電力買い取りサービスの価格を増額する動きが広がっている。卸電力市場価格の変動性が高まり、安定的な電力調達が難しくなっていることから、卒FIT(固定価格買取制度)電気の調達を強化。住宅用太陽光のFIT切れがピークに差し掛かる中、早めに卒FIT電源を囲い込みたい狙いもある。(旭泰世)

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 東急パワーサプライは8日、電力小売サービス「東急でんき」の太陽光余剰電力買い取りサービスについて、23年1月から価格を改定すると発表した。同社の買い取り対象は東京エリアのみ。これまで1キロワット時当たり10円90銭(税込み)だったが、1キロワット時当たり12円(同)に増額する。

 丸紅新電力も8月から買い取り価格を一部改定した。全国10エリアで展開する2種類のプランに関して、1キロワット時当たり1円ずつ増額。シャープ製蓄電池を購入するなど、一定条件を満たした東京エリアの需要家からは、1キロワット時当たり15円(同)で卒FIT電気を買い取っている。

 一方、エネクスライフサービスは買い取り価格を増額する期間限定キャンペーンを10月中旬から始めた。同社は北海道、北陸、沖縄を除く7エリアで卒FIT電気を買い取っているが、東京、中部、関西の3エリアでは3月検針日まで4~7円増額。東京エリアでは1キロワット時当たり16円(同)で買い取る。

 新電力各社が卒FIT電気の調達を強化する背景には、燃料価格や卸電力市場価格の高騰がある。日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場平均価格(システムプライス)について、小売電気事業者の太陽光余剰電力買い取りサービスが始まった19年度は7円93銭だったが、21年度は13円46銭まで急上昇した。東急パワーサプライの広報担当者は、「燃料価格や卸電力市場価格の高騰で太陽光余剰電力の競争力が相対的に上がった」と話す。

 また、新たにFIT切れになる電源が次第に減少していくことから、早めに卒FIT電源を確保する目的もあるようだ。住宅用太陽光は導入から10年でFIT買い取り期間が切れるが、新規導入件数が最も多かったのは12年7月に施行されたFIT法(再生可能エネルギー特別措置法)の開始直後。太陽光発電協会によると、住宅用太陽光(10キロワット未満)の新規導入件数は12年度が42万6868件、13年度が28万8118件、14年度が20万6921件と減少している。

 エネクスライフサービスの野中康平副社長は、買い取り価格を増額した理由を、「今冬の調達価格の安定化が一番の目的」と説明するが、「仮にキャンペーン中に利益が出なくても、長くお付き合いできる人を囲い込みたい気持ちもある」と話す。

 19年度は住宅用太陽光の余剰買取制度から10年が経過したタイミングで、太陽光余剰電力買い取りサービスの「第1の商機」となった。FIT法施行から10年となる22年度下期は「第2の商機」となる可能性がある。電源構成の中で卒FIT電気の比率を高める小売電気事業者が今後増えていきそうだ。

電気新聞2022年11月17日