東京電力PGが新会社設立

 
 東京電力パワーグリッド(PG)は21日、再生可能エネルギーの余剰電力を活用してデジタル価値や環境価値を生成・提供する新会社を設立したと発表した。余剰電力が発生する時間に合わせて分散設置された複数のコンピューターを稼働させることで電力需要を柔軟に創出し、再エネの出力制御や系統混雑緩和につなげる。

 新会社の名称は「アジャイルエナジーX」。8月26日に設立し、10月1日から営業を開始する。資本金は3億5千万円で、東電PGが100%出資した。社長は東電PG経営企画室兼技術統括室兼事業開発室の立岩健二氏が就く。

 新会社は、自治体や再エネ事業者から余剰電力を買い取り、AI(人工知能)の機械学習や仮想通貨マイニングなどに用いられている多数のコンピューターをネットワークを介してつなぎ、膨大な演算を同時並行的に実行可能とする「分散コンピューティング」システムの稼働に利用する。余剰電力が発生する時間などに合わせ、電力を大量に消費するコンピューターを稼働させることにより電力需要を柔軟に創出し、再エネを有効活用する。

 これによって生じたデジタル価値や環境価値などの利益の一部を自治体に還元し、脱炭素まちづくりやエネルギー地産地消、地域経済活性化に貢献する。再エネ事業者は、余剰電力の買い取り先が確保できるため事業採算性が向上。追加的な再エネ導入の促進にもつながる。

 将来的には、系統混雑エリアで分散コンピューティングによる需要を創出し、一般送配電事業者などに調整力として提供することも検討する。

 世界的な脱炭素の流れを受けて再エネの導入は進んでいる。一方で、系統混雑により再エネ連系が困難だったり、再エネの出力制御を実施するエリアは増大傾向にある。環境省は、国内に現在の発電電力量の最大2倍となる再エネ導入ポテンシャルが存在すると試算するが、十分に活用しきれていないのが現状だ。

電気新聞2022年9月22日