契約減で余力、最終保障が穴埋め

 
 日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格が上昇する中、新電力が売り基調を強めている。電源調達コストを抑えるために小売供給契約を次々と打ち切り、供給余力が生じたことなどが要因だ。「大手電力が売り、新電力が買う」という従来の構図は変わりつつある。この傾向が続けば、最終保障供給を担う一般送配電事業者の負担が増えることになる。

 電力・ガス取引監視等委員会が6月公表した1~3月の市場モニタリングによると、旧一般電気事業者を除く「新電力その他」の売り約定量が買い約定量を上回り、これまでの買い越しから売り越しに転換した。

 新電力の入札行動に変化をもたらしたのは、昨年から続く市場価格の上昇だ。市場関係者の話を総合すると、変化のパターンはいくつかある。

 一つは、高圧顧客との契約を打ち切って需要が減った分、自社電源や相対で調達した電源に余力が生じ、買いから売りに転じた。もう一つは、卸供給先の新電力が事業縮小や破綻に陥り、取引先の信用リスクを回避できるスポット市場での売電に切り替えた。また、常時バックアップ(BU)の調達量を増やし余剰分を転売するという、制度の趣旨に反した動きもあるようだ。

 市場関係者の一人は「昨秋以降、新電力は電源調達コストを減らすことに懸命だったが、ここ数カ月で様々な“副作用”が表れてきた」と話す。顧客を減らしすぎて常時BUの調達上限を超えそうになり、慌てて契約を積み増した事業者もいるという。

 ENECHANGE(エネチェンジ)の千島亨太執行役員は、新電力の売り基調が「今後一段と強まる」と指摘する。6月末で小売供給を停止する事業者も比較的多く、最終保障供給への切り替えはまだ増える見通し。このまま市場価格上昇が続けば低圧顧客を手放す事業者も増え、こうした傾向に拍車がかかる可能性があるという。

 市場全体の需給バランスは大きく変化しないため、新電力の買いが減った分は、最終保障供給を担う一般送配電事業者が最終的に穴埋めしなければならない。その調達コストは託送料金に転嫁され、需要家が負担することになる。

電気新聞2022年7月11日