第3回ロボコンの課題は、原子炉格納容器内で溶け落ちた燃料デブリの取り出しだ
第3回ロボコンの課題は、原子炉格納容器内で溶け落ちた燃料デブリの取り出しだ

 福島第一原子力発電所の廃炉作業を担う世代を育成しようと始まった「廃炉創造ロボコン」の第3回大会が2018年12月15日、福島県楢葉町で開催された。文部科学省と廃止措置人材育成高専等連絡協議会が主催し、2016年から行われている。今年は初の海外チームを迎え、計16チームが参加した。競技内容も刷新され、より実践的な廃炉作業の課題に近づき、難易度も高まった。多くのチームが四苦八苦する中、初出場の長岡高専のみが見事に課題を完遂。高い技術力が評価され、最優秀賞を受賞した。

◆第3回の課題
 今回の競技は、原子炉格納容器内で溶け落ちた燃料デブリの取り出しを想定した。会場には原子炉圧力容器を支えるペデスタルの構造をダンボールなどで模擬したフィールドを用意。学生は左側の高台でロボットをセットし、遠隔操作する。ロボットは格納容器に開けられたトンネル(上の写真における中央のパイプ)を通り、圧力容器下、ペデスタルのプラットフォーム(上の写真右側)に到達。さらにプラットフォームに空けられた穴から3.2メートル下のペデスタル下部に落ちているデブリに見立てたテニスボールやピンポン球を回収し、元の位置まで戻ってくるのが課題だ。競技時間は10分。

 

緊張感の中にも熱意

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 競技前に記念撮影へ臨む全国14の高等専門学校と初の海外チームであるマレーシア工科大学の計16チームの学生たち。4月の課題公開と参加者募集、アイディアシートなどによる書類選考などを経て、数ヶ月の製作期間に精一杯の技術を込めた。会場では緊張感の中にも全力を出し切ろうとする熱意がうかがえた。学生たちは仲間と作り上げた機体で難題に挑戦。若さあふれる斬新なアイディアは審査員と観客を大いに魅了した。

 

16チーム中、唯一、課題を達成できた長岡高専

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 計16チームの頂点となる最優秀賞には、新潟県の長岡高専が選ばれた。長岡高専は初出場。今回の大会で唯一、課題を完遂させ、高い技術力が評価された。長岡高専チームの競技のようすをみてみよう。

 

ロボットをトンネルにセット

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 高台でトンネルにロボットをセットし、競技が始まる。トンネルは内経240mmで長さ4m。また原子炉格納容器の厚いコンクリート壁により、ロボットへ電波は届かないという想定だ。おおむね有線でロボットを操作することとなる。競技中はロボットから送られてくる映像のみで状況を把握し、的確な操作が求められる。

 

ロボット投入!

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 トンネルを抜け、プラットフォームに到達したロボット。格納容器底部にあるデブリを回収するため、ここからアームを伸ばしたり、回収用の子機を送り込んだりする。開口部から3.2m下のデブリへアプローチするのにあたり、ロボットは形状を変化させる。長岡高専の親機は足を開いて作業を安定させ、子機を降下した=写真。

 

デブリをつかみあげる

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 長岡高専チームの子機ロボット。ロボットの昇降を安定化させるために金属製のメージャーを取り入れ、放射線の影響を受けにくい水圧シリンダーを使うなどの工夫を凝らした。これにより、デブリを想定したテニスボールをつかみあげた。

 

海外からの参戦も

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 大会初となる海外からの参加も実現した。日本の冬の寒さにも負けず参戦したのは、マレーシア工科大学の3人。競技前には、使い捨てカイロを傍らに、一心に準備を進める姿があった。

 

予想以上の成果に笑顔

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 競技を終えた地元福島高専のチーム。競技では子機がデブリを回収し、親機まで戻ることができた。課題完遂までは至らなかったが、予想以上の成果に顔をほころばせた。

 

学生と来場者の交流も

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 競技で実力を発揮できなかったチームも、それぞれのロボットへの思い入れは深い。審査結果を待つ間、来場者が学生と対話する機会があった。実は、このように動かしたかったのだと説明する学生。来場者が納得して感嘆すると、両者に笑みがこぼれた。

2018年12月27日