第7回「廃炉創造ロボコン」(主催=日本原子力研究開発機構、廃止措置人材育成高専等連携協議会)が2022年12月10日、福島県楢葉町の楢葉遠隔技術開発センターで開催された。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉技術をテーマに、全国の高等専門学校生がロボットの製作、技術、アイデアを競い合う本大会は、16年度から毎年度開催されている。廃炉を担う次世代の技術者が集まり、福島第一の現状を見つめ、廃炉課題を発見、解決するためのロボット製作を競い合ってきた。今回は12校14チームが参加(旭川高専と一関高専からは2チーム出場)。最優秀賞には小山高専が選ばれ、2連覇を達成した。


 競技内容は前回大会と同じく、高放射線量エリアの除染。遠隔操作で指定された経路をたどり、高さ2.7メートルの壁面上部を除染する。除染作業は模造紙を塗りつぶすことで再現し、精度を比べる。選手は青いパーティション(左)の中から遠隔操作する(写真は小山高専の競技)。

 

【最優秀賞】

 最優秀賞の文部科学大臣賞を獲得した小山高専。右後ろに見えるのはロボットが塗りつぶした模造紙だ。10分間の競技時間のうち、半分以上を残して除染位置に到達。除染作業もよどみなく進め、重ね塗りをするほどスムーズな競技を行った。除染作業はプログラムによって自動で行った。審査員からは「実用的かつ効率的で完成度の高いロボット」と評価され、受賞に至った。

 

【日々の研鑽が生き】

 負けず劣らずスムーズな競技を見せてくれたのが、写真の舞鶴高専。次席の優秀賞(福島県知事賞)を獲得した。今回、ロボットの移動経路上に新たに設けられた障害物のグレーチング(金網)は、多くのチームを苦しめた。舞鶴高専は、エアシリンダーでロボットを持ち上げる昇降用の車輪を使い、危なげなく通過(左写真)。この機構は過去の授業で、段差を乗り越える車いすを発案したときに作った設計を流用したものだという。日々積み重ねてきた彼らの成果が実社会で生きるのも、そう遠い日のことではないと感じた。

 

【難題に挑戦】

 除染の機構で出色だったのが、鶴岡高専のロボット。他チームも「ロボットアームは授業でやったがとても難しい。(挑戦したことに加え)実現したのもすごい」と舌を巻く。センサーで壁面との距離を測ることで、かすれずに線を描いて見せた。競技では除染位置にたどり着けなかったが、競技後の実演で成果を見せつけた。

 

【リアルな緊張感】

 遠隔でロボットを操作する選手たち(写真は旭川高専の人田製作所チーム)。競技中にロボットを直視できないルールは、高放射線量エリアでの作業を前提にした本大会の特徴。ロボットから送られてくる画像などの情報を頼りに、パソコンのキーボードや、ゲーミングコントローラーなどで操縦する。真剣なまなざしは、さながら実際の廃炉作業の現場。

 

【精いっぱいをぶつけ】

 競技開始直前、ロボットを所定の位置に据えるも、不調に見舞われた福島高専。駆け回って、地面に伏して、一度きりの本番に持てる技術力をぶつける。うまくいかず悔しい中でも「経験値は今まで以上に積むことができた」との感想は、関係者にとっても心強いことだろう。

 

【ロボットを囲んで】

 競技を前にロボットを調整する一関高専(藤原研究室Bチーム)の選手たち。どのチームにとっても仲間とロボットに打ち込んだ時間はかけがえのないものであったろう。実行委員長の内海康雄氏(舞鶴高専校長)は閉会式のあいさつで「短期間でチームを組んでやったことは、想像よりもすごいこと」と寄せた。

 

【言葉に変えて】

 審査結果を待つ間には、選手たちと観客が対話する機会も設けられた。写真の仙台高専など数チームは、マイクを持ってプレゼンテーション。本番では、競技場の滑りやすい床面など、製作場所との違いに苦労したようだが、ロボットに込めた思いを言葉にのせた。

 

【チームの数だけ経験が】

 競技を終えると互いのロボットについて語り合う。写真は舞鶴高専と富山高専の選手ら。「色々な技術を試そうとすると、時間も費用もかかってしまう。他チームの話を聞くことで、どういった問題があるか、何が難しいのか、経験を共有できるのはとてもありがたい」(舞鶴高専)と多くのチームと交流していた。

 

【期待を込めて】

 前日のテストランから本番まで、選手たちの健闘を見とどけた4名の審査委員。飯塚直人氏(東京電力ホールディングス福島第一廃炉推進カンパニー廃炉技術担当)は講評で「皆さんの優れたアイディアと粘り強さは、一つのプロジェクトをやっていく上で、極めて大切なこと」「一緒に廃炉を進めていけたらと思いを新たにした」とエールを送った。

 

【第7回「廃炉創造ロボコン」審査結果】

表彰名

高専名

チーム名

ロボット名

文部科学大臣賞(最優秀賞)

小山工業高等専門学校

小山高専廃炉ロボット製作チーム2022

Wall Brusher Ⅷ

福島県知事賞(優秀賞)

舞鶴工業高等専門学校

舞鶴高専廃炉研究会

角管食堂NEO

高専機構理事長賞(アイデア賞)

鶴岡工業高等専門学校

鶴岡高専 Eチーム

キムワイプ

原子力機構理事長賞(技術賞)

大阪公立大学工業高等専門学校

Fukaken

66B

イノベ機構理事長賞(イノベーション賞)

熊本高等専門学校(熊本キャンパス)

熊本高等熊本キャンパスロボコン部

JetPack

特別賞・アトックス賞

仙台高等専門学校

DBK(Disinfection By Kengo)

オートスイーパー

特別賞・日立GEニュークリア・エナジー賞

旭川工業高等専門学校

人田製作所

下町ロボット

特別賞・東京エネシス賞

一関工業高等専門学校

機械技術部

Hypnosis X

特別賞・アスム賞

福島工業高等専門学校

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2022年12月28日