第9回「廃炉創造ロボコン」(主催=日本原子力研究開発機構、廃止措置人材育成高専等連携協議会)が2024年12月21日開催された。例年と同じく、原子力機構の楢葉遠隔技術開発センター(福島県楢葉町)が会場となった。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉技術をテーマに、全国の高等専門学校生がアイデアやロボット製作技術などを競う本大会。廃炉の核心を担う世代、技術者の卵たちが集い競い合った。招聘(しょうへい)参加のマレーシア工科大学を含め、15校から計17チームが参加。一関高専と熊本高専からは2チームが出場、岐阜高専と宇部高専が初参加した。今回は競技テーマが刷新され、原子炉格納容器の内部調査がテーマとなった。ロボットを遠隔操作し、放射性汚染物のサンプルを回収し、戻ってくるまでが課題だ。審査の結果、小山高専が最優秀賞を獲得。同校のチームとしては4連覇を達成した。
【新たな課題、アプローチは2択】

2024年、福島第一原子力発電所の廃炉現場では、ロボットによる燃料デブリの試験的取り出しに成功したが、ロボコンの課題もまた、より廃炉の核心に近づいたものとなった。競技テーマとなったのは原子炉格納容器内でのサンプル採取。原子炉格納容器にある貫通孔からロボットを投入し、放射性汚染物のサンプルを模した一辺1センチメートルのアクリル製立方体を回収して持ち帰るのが課題だ。ルートは2つから選択できる。一方は「小口径配管」と呼ばれる内径40ミリメートルほどの細い筒からロボットを投入し、回収対象物を持ち帰る(図右のフィールド)。こちらは小型のロボットを製作する難しさがある。もう一方は「X-1ペネ」と呼ばれる内径500ミリメートルほどの筒からロボットを投入し、狭い通路、急な階段を通り、回収対象物を持ち帰る(図左のフィールド)。こちらは比較的大きなロボットで挑めるが、難所が多いのがポイントだ。
【最優秀賞には小山高専】
最優秀賞(文部科学大臣賞)を獲得した小山高専(写真左から舟田悠太郎さん、星野怜生さん、指導教員の田中昭雄さん)。「ロボットさえ小さく作ってしまえば直線的なアプローチができる」と「小口径配管」からのアクセスを選択した。今回、サンプルを回収して戻ってくるまでの課題を完遂した唯一のチームとなった。右の写真は、競技中にサンプルを回収する小山高専のロボット。先端のカメラの体積が大きく、他の部品や回路などを収めるのに苦労したという。またロボットが小さいと、配線を引っ張る力が弱いのが難点だった。小山高専は、配線の回りに突起物をつけ、さらに振動する機能を持たせるなど、抵抗を減らす工夫も組み込んだ。