2030年までの商用化目指す
米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、大気から二酸化炭素(CO2)を直接回収する「DAC」の技術開発を本格化させる。2024年に年50トン程度のCO2を回収できる装置を実験室に設置する計画だ。従来の小型試作機と比べて20倍の回収能力を持つ。30年までの商用化を目指す。DACは設置場所が自由で使い方の柔軟性も高く、CO2対策として大きな可能性を秘めている。開発競争が加速することで社会実装の早期化が期待される。
GEはDACの技術開発で、米エネルギー省(DOE)から支援を受ける。DACの吸着剤と統合材料システム技術の開発を進めるため、米TDAリサーチ社やカリフォルニア大学バークレー校とも連携する。産官学で開発を推進する。
国際エネルギー機関(IEA)はカーボンニュートラルの達成には、DACで30年までに年6千万トンのCO2回収が必要と試算している。現状では世界18カ所で装置が稼働しており、回収量は合計で年1万トン規模。スイスのスタートアップ、クライムワークスは21年にアイスランドで年4千トンの能力を持つ大型回収装置の稼働を始めた。
DACの課題はコストだ。GEによると、稼働中のDAC技術ではCO21トン当たり500~千ドルを要する。世界資源研究所は同250~600ドルと計算している。コスト引き下げには装置の大型化や、収益モデルの確立が必要になる。
米国はインフレ抑制法(IRA)で技術開発を支援する。DACの税控除は同180ドルで、CCS(二酸化炭素回収・貯留)の同85ドルより手厚い。将来的にGEは、装置の大型化によって回収コストを同100ドルまで下げる目標を掲げる。必要な熱エネルギーに太陽熱や未利用排熱を活用すれば、省エネで経済性が高まる。
日本でも重工系がDAC技術の開発を推進する。川崎重工業は、日量0.5~1トンの回収能力の装置を25年に実用化する。三菱重工業は日量数キログラム規模の試験装置を22年に開発し、25年以降に日量1トン規模の実証を始める計画だ。
電気新聞2023年4月14日