模擬したオイル漏れを検知するロボ

 関西電力グループは25日、自走式ロボットと人工知能(AI)による火力発電所向け巡視点検システムを開発したと発表した。現在、発電所所員が目視で行っている設備点検の省力化を図り、これから予想されるベテラン技術者の退職に伴う技術・技能の継承を支援することを目的に開発を進めていた。現在、作業員が行っている巡視業務の約25%を代替できる。今後、自社火力設備への配備や、発電所以外も含む製造業への展開を計画する。

 関電や「K4 Digital」(K4D、大阪市、北原寛千社長)、関電システムズ(大阪市、下村匡社長)が2018年から開発に着手。昨年12月からは堺港発電所(LNG、計200万キロワット)のタービン建屋1階で実証実験を実施し、技術の有効性を確認した。

 システムは発電所巡視向けに最適化した自走式ロボとAI診断システムで構成され、現在、作業員が行う「設備の感知」と「異常に対する気づき」の役割を担う。

 ロボは可視光カメラ、音響マイク、サーモカメラ、ガス検知機などを搭載。プログラムしたルートに従って発電所内を周回し、映像などデータを収集する。一方、AI診断システムは収集したデータを基に、オイル漏れなどの異常を自動で検知し、警報を発出する。

 現在の試作機では作業員の業務の約25%を代替し、1発電所当たり年間数千万円のコスト節減効果を見込む。現在、AIのさらなる精度向上などの本格開発に入っており、21年度の自社火力への本格導入を目指す。21年度に他社発電所のほか、製鉄所や製油所など同様の課題を抱える製造設備への展開も予定する。また、ロボの行動範囲拡大に加え、建屋2階以上でもドローンや固定センサーとAI診断システムを組み合わせて、同様に異常を自動検出する技術の開発も検討する。

 25日に報道陣に対し、ロボのデモ走行を公開。漏油を模擬した機械油に対しては異常を自動検知するが、作業用として置かれた段ボール箱は異常と見なさないなど、AIの精度の高さをアピールした。

電気新聞2020年8月26日