政府は9日夕、石炭火力輸出支援条件の厳格化を決めた。経済産業省、環境省が激しい交渉を繰り広げる中で、落としどころを探った結果、「支援を行わないことを原則とする」とした記述が入り、小泉進次郎環境相は歓迎の意向を示す。一方、経済産業省・資源エネルギー庁は、厳格化後も新たな案件が出てくるとみている。エネ庁はここ数日、立て続けに内外の脱炭素化に向けた取り組みを表明。第6次エネルギー基本計画や新たなエネルギーミックスの策定を念頭に、その裏付けとなる政策を打ち出し始めている。
新たなインフラシステム輸出戦略は、二酸化炭素(CO2)排出削減に貢献する選択肢の提案や、脱炭素化に向けた政策策定を支援する「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」の推進が基本。石炭火力の新規計画については、二国間協議の枠組みなど、「相手国のエネルギーを取り巻く状況・課題や脱炭素化に向けた方針を知悉(ちしつ)していない国に対しては、政府としての支援を行わないことを原則とする」とした。
◇輸出支援に条件
その上で、日本の政策誘導・支援で脱炭素化に向かい、相手国が発展段階に応じた行動変容を行うことを、支援が特別に認められる条件として挙げた。加えて、輸出できる発電プラントは、石炭ガス化複合発電(IGCC)などのほか、超々臨界圧(USC)の中でも発電効率43%以上の最新鋭のものに限定した。
今回の輸出支援条件厳格化で、新規案件は生まれるのか。エネ庁の南亮資源・燃料部長は日本の最新鋭プラントへのニーズは一定数あり、「新しい案件は出てくるとみている」とする。また、梶山弘志経産相は「現状から一足飛びに理想論にいけるかどうか。経産省は理想は高く持ちながらも、より現実的に考えていく」と、石炭火力輸出による非電化地域支援への思いをにじませた。
一方、小泉環境相は「支援を行わないことを原則とする」との記述について、「異例の決着をした」と述べ、今回の交渉成果として強調。「いくら言っても動かないといわれていた日本が歩み始めたと評価される」と述べた。
また、新戦略に対する解釈が経産省と異なっているのではとの質問には、「どういう風に発信するかは、省庁ごとにコミュニケーションのスタイルがある」と述べるにとどめた。
◇洋上風力育成へ
今回の石炭火力輸出支援条件厳格化に合わせ、エネ庁は洋上風力の産業育成に向けたビジョンを官民協議会で作成すると表明した。先日の非効率石炭火力のフェードアウトや、今回の発表は脱炭素社会実現に向けた内外一体の政策運営という。再生可能エネルギーの導入拡大や石炭火力の削減など、低炭素化に向けた政策を立て続けに打っている。
電気新聞2020年7月13日
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