4月1日、政府は平成に代わる新たな元号を「令和(れいわ)」に決定した。5月1日、新天皇が即位され令和の時代が始まった。写真は新元号の発表後、談話を発表する安倍晋三首相(4月1日、首相官邸)
4月1日、政府は平成に代わる新たな元号を「令和(れいわ)」に決定した。5月1日、新天皇が即位され令和の時代が始まった。写真は新元号の発表後、談話を発表する安倍晋三首相(4月1日、首相官邸)

 

乱立する小売事業者と消費者保護

 
 ランキング第1位となったのは、代理店の違法営業や過大請求問題が浮上し撤退した新電力をめぐる記事「新電力“撤退劇”が波紋、違法営業の次は過大請求」(7月12日付)。

 16年の電力小売り全面自由化から3年半以上が経過し、12月10日現在の登録小売電気事業者は630事業者にのぼる。小売電気事業者だけでなく、代理店や取次などを含めるとさらに多数の電気の店舗が存在することになる。この記事で取り上げたように、一部の事業者では違法営業などが問題視され、事業撤退に至るケースも出てきている。電力自由化後の消費者保護とは何かを訴えかけた記事だ。
 

制度設計とレジリエンス

 
 20年4月の発送電分離に向けて、19年は制度議論が活発に行われた。ランキングの記事から拾ってみよう。

 電力インフラ投資の先行き懸念を取り上げた記事「電力インフラ『過小投資』に危機感/制度、対策議論が急務」(第19位、2月15日付)は、適切な電力ネットワーク形成に向けた課題を議論するため、総合資源エネルギー調査会に「脱炭素電力レジリエンス小委員会」が設置されることを報じている。同委員会は5月、「連系増強は全国負担、エネ庁が方針/再エネ部分、FIT賦課金方式に」(第13位、5月17日付)にあるように方向を示し、7月1日付の「託送料金制度見直し、議論が本格化/エネ庁」(第2位)では同委員会が制度設計の方向性を固めたことを報じた。7月30日には中間整理をまとめている。

 一方、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の見直しについても、「再エネ拡大『需給一体型』構築へ、エネ庁が自家消費を後押し」(第20位、7月10日付)、「FIT見直しへ方向性/有識者会合が中間整理案」(第5位、8月6日付)の記事にみられるように総合エネ調の再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会において、議論が進んだ。

台風15号の停電長期化について、検証を開始した電力レジリエンスWG(10月3日、経産省)
台風15号の停電長期化について、検証を開始した電力レジリエンスWG(10月3日、経産省)

 制度の抜本的見直しに着手しようとしていた矢先の9月、10月、大型台風が相次いで襲来。本紙でも連日報道した。その中から9月10日付の「[台風15号上陸]関東で93万戸停電/千葉・君津で鉄塔2基が倒壊」が第16位にランクインしている。

 台風被害により、昨年の北海道ブラックアウトによって顕在化した電力設備のレジリエンス(強靱性)に関する議論が再燃。経産省は「電力レジリエンスワーキンググループ」を再開し、対策を検討するとともに、ここを起点に持続可能な電力システム構築小委員会、再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会の2つの小委員会が設置され、施策の具体化が図られた。11月18日付の「アグリゲーター事業者に『ライセンス制』検討/経産省」(第14位)は、議論の方向性を報じた記事だ。

 これらの議論は12月に取りまとめが行われ、FITからFIP(フィード・イン・プレミアム)へ移行することや、託送料金制度へのレベニューキャップ導入、アグリゲーターのライセンス制導入などの方針が示された。
 

変わる太陽光ビジネス

 
 19年11月から始まったFIT切れ太陽光発電の買い取りについても各社の対応が進んだ。大手電力などの対応をまとめたのが第3位の「FIT切れ太陽光、余剰買い取りで火ぶた」(5月14日付)だ。第8位の「[変化を追う](41)第5部・変わる太陽光ビジネス(1)」(11月11日付)では、連載でFIT後の太陽光発電ビジネスを追った。「九州電力、出力制御で新運用/再エネ受け入れ『最大化』を模索」(11位、10月15日付)は、太陽光発電の大量導入が進む九州電力エリアで、受け入れ拡大を目指し運用方法の改善が行われていることを報じている。
 

電気事業と収益

 
 競争が進み、かつ制度が変わっていくことで、各社の収益にも影響を与えている。第4位の「[電力10社・19年度中間決算]8社が経常増益確保」(11月5日付)は大手電力のうち8社が増益を確保したものの、小売販売が減少していることを指摘。第9位の「『特重施設』問題、ベースロード市場に余波?」(6月7日付)は、原子力発電所に求められる特定重大事故等対処施設への対応が遅れて停止する事態になると、今年7月取引を開始したベースロード市場に影響が出るとの懸念を報じている。第10位の「新電力、利益で明暗/間接オークション、市場の東西値差が影響」(3月11日付)では、18年10月に始まった間接オークション制度が新電力の経営に影響を及ぼしていることをレポートしている。

 今年は間接送電権市場(4月)、ベースロード市場(7月)、先物市場(9月、試験上場)が開設された。このように変わりゆく電気事業制度を解説したのが連載「読解2019 自由化キーワード」シリーズで、インバランス料金を取り上げた第3回(第18位、8月20日付)がランクインした。
 

火力事業の行方は

 

4月に完全統合を果たしたJERAは経営陣も新体制となった(右から垣見祐二前社長、小野田聡社長、佐野敏弘会長、ヘンドリック・ゴーデンカー取締役・上級副社長)
4月に完全統合を果たしたJERAは経営陣も新体制となった(右から垣見祐二前社長、小野田聡社長、佐野敏弘会長、ヘンドリック・ゴーデンカー取締役・上級副社長)

 発電事業でも、大きな事業環境の変化により、方針転換を余儀なくされる状況が生まれてきている。第7位の「岐路に立つ大型石炭火力/首都圏向け、開発か撤退か進む選別」(1月7日付)は、東日本大震災後、原子力停止に伴い首都圏向け大型石炭火力発電所計画が多数検討されていたが、再生可能エネルギーの普及や原子力発電の再稼働、地球環境問題への対応などにより、投資判断を迫られているとの記事だ。第17位の「[変化を追う](29)第4部/発電事業、リスクと可能性(1)」(1月15日付)も、それぞれの発電事業が抱える課題について取り上げた。

 また、東京電力と中部電力の燃料・火力発電事業の合弁会社JERAが4月1日、完全統合を終了した。これに先立ち新体制人事の発表を報じた記事「JERA会長に佐野氏、社長は小野田氏/完全統合、新経営体制へ」(2月5日付)も第12位にランクインした。
 

海外動向も詳細に

 
 今年は欧州やイスラエル、台湾など海外の動向についても取材を敢行したが、そうした記事の中でも、自由化先進国であるイギリスの電力事情を取材した「[変わる境界・英国レポート](1)送電と配電、関係に変化の兆し」(第6位、9月26日付)、「英国『送電・配電』変わる関係性/分散型リソース拡大で」(第15位、8月19日付)がランクインした。
 

2020年改革と電気新聞

 
 発送電分離まで、いよいよあと3カ月強。大きなエポックを迎える2020年も、電気新聞の記事にご期待ください。

電気新聞2019年12月27日

1 2 次へ »