電力中央研究所は、エコキュートに対する効果的な補助金の在り方をまとめた。新築住宅向けは、既築に比べてより少ない金額で二酸化炭素(CO2)削減効果が得られると分析。既築向けは、燃焼式を使う消費者の行動変容を促す補助の在り方が求められるとした。家庭部門のCO2削減に貢献するエコキュートの普及拡大に向けて、こうした観点に基づく制度設計が重要と指摘する。

 給湯に使用するエネルギーは、家庭部門のCO2排出量の約4分の1を占める。省エネ性の高いエコキュートの普及拡大が期待されているものの、初期費用の高さが課題だった。導入加速に向けては、補助制度の在り方が重要な鍵を握る。

 今回の研究は、電中研社会経済研究所の山田愛花研究員を中心に実施。「家庭用給湯分野への省エネ補助金の効果分析」と題した報告書として、4月に公表した。

 研究では、1トンのCO2削減にかかった補助額で費用対効果を評価した。補助対象の世帯は「一律」「新築のみ」「既築のみ」の3通り、補助額は5万、10万、20万、30万円の4通りに分類。60万円前後の機器価格に工事費や維持費が上乗せされるとして、これら計12通りの補助パターンの効果を比較した。期間は2025年の1年間を想定した。

 その結果、新築向けは既築向けに比べて少ない補助でCO2削減効果が得られることが分かった。理由の一つは、消費者の特性にある。機器更新時に同じタイプを選びやすく、エコキュートを導入済みの世帯は、補助がなくても同じ選択をする可能性が高い。そうした世帯にも補助を行うため相対的に効果が下がってしまう。

 一方、「補助がなければ導入しなかった世帯」で比較すると、新築と既築でCO2削減効果に大きな差はみられなかった。電中研はこうした傾向を踏まえ、既築向けの補助では(1)燃焼式からの転換を補助(2)導入時期の前倒し促進――といった消費者の行動変容を促す制度設計が重要と分析した。

 逆に新築向けでは、補助の有無にかかわらず同タイプの機器を使い続けるという消費者の特性が強みになるという。将来的な機器更新の機会も多いため、1回の補助でより多くのCO2削減効果が得られる。新築向けに早期導入を促す補助を行い、エコキュートを定着させる必要性を指摘した。

 このほか、初期費用圧縮をより重視する低所得者、賃貸設備のデベロッパーやオーナーといった属性に補助を出すことも効果的と分析した。

電気新聞2024年6月5日