◆JPEAなど、対策の有効度合い定量化へ

 太陽光発電協会(JPEA)などは、太陽光事業者向けに、災害や盗難へのリスク対策チェックシートや、対策ガイドラインをまとめた。盗難リスクを原則不担保としたり、災害時の支払限度額に上限を設けるなど、損害保険会社が太陽光関連の保険引き受け条件を見直している状況を踏まえた。今後、各対策とリスク軽減実績の相関関係を分析して対策の有効性を明らかにする。保険条件の適正化にも役立てていく。

 昨今の異常気象に伴う災害や、ケーブル盗難の増加により、損害保険会社の保険金支払額は急増している。

 日本損害保険協会が2月にまとめた調査によると、事故による保険金支払額は2017年度から21年度の間に約4倍に増加。1億円以上支払ったケースは約5倍に増えている。

 内訳は保険金単価が1千万円を超える雪災(26%)と水災(24%)が1、2位を占め、風ひょう災(19%)が続いた。

 盗難については、銅線価格の高騰などを背景に、21年度から被害が急増。22年度は17年度の20倍近い保険金を支払った。

 ◇新規開発難しく

 23年も被害は収まらず、全国で1万6276件発生。統計を取り始めた20年の3倍に達した。保険金支払額も22年比で約3倍にのぼる。大手損保によると、盗難被害の拡大時期と重なる19年4月~24年2月に太陽光発電の保険金支払いの原因となった事故の割合は盗難、雪害がともに27%でトップを占めるとの分析もあり、その深刻さがうかがえる。

 JPEAなどの調査では盗難により、最大13カ月間の発電停止に見舞われたケースも見つかった。損害保険の査定は原状復帰までの費用が対象で、管路補強など盗難対策の費用は含まれず、追加費用の負担も大きい。

 一方で太陽光関連の保険金支払額の増大は、損害保険会社の営業損益の悪化を招いている。

 このため、各社は保険金の引き上げや、盗難リスクの原則不担保、支払限度額の上限設定などに踏み切っており、発電事業者の事業リスクは高まっている。新規案件はもちろん既存案件の事業継続が難しくなる可能性が懸念され、特に高圧・特別高圧のプロジェクトは大きな影響を受ける。

 ◇確認シート作成

 こうした状況を受け、JPEAと再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)は、自然災害や盗難への対策をまとめたチェックシートを作成した。

 今後、出力1千キロワット以上の太陽光を中心に展開し、リスク対策と実際の損害・盗難実績の相関関係を分析する。対策の有効度合いを定量化することで、適正な保険条件の設定につなげる考えだ。

 同時に盗難の被害抑制に向け、金属くず取引の厳格化や、外国人犯罪者への罰則・管理強化などを関係機関に訴えていく。

電気新聞2024年10月18日