関西電力は16日、福井県敦賀市で原子力発電を活用した水素製造の実証事業を開始したと発表した。美浜発電所、高浜発電所、大飯発電所で発電した電力を敦賀市にある水素ステーションへ供給し、燃料電池車(FCV)で使う。発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原子力由来の水素製造は国内初の試みだ。関電が開発したトラッキング(追跡)システムと水素ステーションを連携させ、製造から利用まで一連の流れを可視化する。原子力発電で製造したと特定し、CO2排出削減量の算定に生かす。

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 実証では敦賀市公設地方卸売市場に水素エネルギー供給システムを設置。16日から来年2月28日までFCVに10回程度充填する。利用段階では電気分解にどの発電方法を利用したかが分からないため、関電の再生可能エネルギーのトラッキングシステムで供給情報を把握する。実証結果を踏まえて2023年度以降の取り組みを検討する。

 敦賀市は調和型水素社会形成計画(ハーモニアスポリス構想)を19年に策定した。関電は、脱炭素に向けた定量的な目標や具体策をまとめた「ゼロカーボンロードマップ」で原子力を活用した水素製造の取り組みに言及。サプライチェーンの構築を検討している。21年度は嶺南地域でVPP(仮想発電所)実証を行って、再エネ由来のCO2フリー電源を特定できるか検証した。その成果を原子力由来の水素に応用する。

 50年カーボンニュートラル実現に向けて、水素は注目を集めている。その一方で、大量導入の際には、エネルギー安全保障の観点から一定程度を国内で製造することが必要となる。25年の大阪・関西万博では、原子力水素を利用する取り組みに期待が高まっている。

電気新聞2022年12月19日