経済産業省・資源エネルギー庁は25日、固定費回収の予見可能性を確保して脱炭素電源新設を後押しする新制度について、発電事業者の入札に関する大枠を固めた。新技術導入時のコスト増リスクを踏まえ、建設費のうち初期投資額に10%を上限とする予備費を織り込むことを容認する。スポット市場など他市場から得る収益はゼロと見なして入札され、発電事業者が余分に得た利益は一定の電源稼働インセンティブを除き、新制度で得られる収入から控除される。各電源別の収入試算も示した。


 25日に開いた総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)電力・ガス基本政策小委員会の制度検討作業部会(座長=大橋弘・東京大学大学院教授)で大筋合意した。

 発電事業者の入札価格に反映できるのは、建設費や系統接続費、廃棄費用、制度期間中の経年改修費を含む運転維持費、事業報酬とされた。これに加え、一般的には可変費に該当する水素・アンモニアのサプライチェーン構築投資、燃料調達契約などを固定費として織り込むかどうか、今後議論を深める。

 新制度は20年にわたって脱炭素電源の収入を確保し、発電事業者に固定費回収の予見性を付与する方向。一方、可変費はスポット市場や需給調整市場、高度化法義務達成市場などからの収入で賄う。こうした点を考慮して入札価格を決めるのが本筋だが、将来にわたって他市場収益を算定することは困難。シンプルな制度設計とするため、入札時はゼロと見なす。

 発電事業者が可変費分を超えて取り過ぎた他市場収益は、還付する必要があると整理された。その際、電源の稼働インセンティブに配慮し、全額還付ではなく9割を返し、残り1割を事業者が留保できるとの目安が示された。市場からの収入や可変費は、領収書や契約書などの提出を発電事業者に求めて割り出す。

 エネ庁が現時点の他市場収入などを想定して大まかに試算した毎年の収入額目安は、既設石炭の改修(アンモニア20%混焼)が1キロワット当たり1万3千円、二酸化炭素(CO2)分離回収型石炭が同1万9千円、水素専焼が同9千円、原子力が同1万3千円などとなった。こうした収入を20年間、発電事業者が得られる方向。

 また、4月26日の基本政策小委で示された、脱炭素化されていない火力などの電源も制度対象とする提案が委員に紹介された。電源の新陳代謝を早期に促すため、LNG火力などの一部を一定期間内に限り対象として認めるかどうか、今後制度検討作業部会で議論する。

 会合で花井浩一オブザーバー(中部電力執行役員)は「今後のエネルギー政策や電気事業制度において極めて重要な仕組み」と新制度の意義をあらためて強調した。

電気新聞2022年5月26日