「食の低炭素化」を探る

 電力中央研究所は、気候変動対策における食行動の変容に関する研究を推進する。世界の温室効果ガス(GHG)排出量のうち、食のサプライチェーンから排出されるGHGは約3割を占める。電中研では電気事業のサプライチェーンに関する研究に加え、食の観点からも気候変動対策に資する研究に取り組む。研究では日本における肉や加工品など食に伴うGHG排出量を試算し、食が気候変動に与える影響を定量的に評価。その結果を踏まえ、今後、数年かけて脱炭素社会に適した食生活などを提案する。

 研究では(1)日本のGHG排出量に占める食のサプライチェーン割合の調査(2)食品ごとのGHG排出量の試算(3)脱炭素社会に適した食生活の考案――を行う。2021~22年度にかけてGHG排出量の計算を行った後、栄養士などを交えて“低炭素食”を検討。その後、地球温暖化対策として食生活の変化や食品ロスの削減などが有効であることを検証する考えだ。

 世界のGHG排出量の内訳はエネルギー起源が約7割、食起源が約3割となっている。電中研によると、食のサプライチェーンのうち、畜産が約4割、その他が約6割を占めているという。こうした背景から米国や英国、フランスなど欧米諸国では脱炭素社会実現に向けて、菜食の推進や畜産物への課税、食品ロス削減などの対策の施行・検討を進めている。ただ、日本では低炭素型の食などに関する研究や取り組みは少なく、気候変動対策としての食について注目を集めてこなかったという。

 研究を担当する電中研の木村宰上席研究員は「脱炭素社会実現は難しい目標。そのため、GHG排出量が多いとされるエネルギー部門以外の排出源についても研究を進めていく」と説明。その上で「レストランのメニューにGHG排出量を提示したり、食品ロスを減らすために食器サイズを変更したりするなど、一般の方でも脱炭素社会実現に貢献できる『食行動変容』についての研究にも取り組んでいきたい」と話した。

電気新聞2021年10月8日