
経済産業省は22日、総額2兆円のグリーンイノベーション基金事業のうち、アンモニアの研究開発の方向性を提示した。石炭火力への高混焼化(50%以上)や、ガスタービンでの専焼技術確立を目指す。国内大手電力が保有する石炭火力を全てアンモニア専焼にすれば、電力部門の二酸化炭素(CO2)排出の約5割を削減でき、インパクトが大きい。アンモニア供給コスト低減の取り組みも含め、専焼化に向けた道のりを2兆円基金で支援する。
現状、JERA碧南火力発電所4号機でアンモニア20%混焼に向けた準備が進んでいる。一層の混焼率アップや専焼化に向けては、本来燃えにくいアンモニアの着火・燃焼の安定性、窒素酸化物(NOx)低減手法の開発が必要。また、アンモニアは毒性があるため、排ガス中に残留する未燃アンモニアの対応も重要で、バーナーなどの改良が期待される。
既存の石炭火力ボイラーを活用した混焼や専焼だけでなく、ガスタービンでの専焼も選択肢として追求する。2050年に向け、石炭火力をリプレースする際、ガスタービン専焼が選択される可能性を念頭に置いた。初期投資は高くなるが、熱効率が向上するメリットがある。
水素からアンモニアを製造するプロセスの改善も基金で支援する。これまでは、高温高圧下で鉄系触媒を用いるハーバー・ボッシュ法が使われてきた。水素を再生可能エネルギーで製造したとしても、このプロセスで多量のCO2が排出される。反応温度・圧力の低減や新たな触媒を開発することで、ハーバー・ボッシュ法に変わる手法を確立。アンモニア製造コストやCO2排出量低減を目指す。
これとは別に、革新的グリーンアンモニア製造技術の確立も視野に入れている。これまでは再生可能エネルギーによる水の電気分解で水素を製造、貯蔵するとともに、ハーバー・ボッシュ法による合成という3プロセスが必要だった。現在、水と窒素から1ステップでアンモニアを電解合成できる技術が、ラボレベルで実証されている。こうした技術についても、基金を用いて研究開発を支援する。
電気新聞2021年6月23日