電力・ガス取引監視等委員会は、小売電気事業者の24%が卸市場価格高騰などのリスクを把握しておらず、半数近くが定量的に管理できていないとの調査結果をまとめた。市場リスクに備えるためには先渡し・先物取引やベースロード(BL)市場の活用が選択肢になる。こうした「ヘッジ取引」を必要に応じて実施できていない事業者も55%にのぼることが判明。理由にはヘッジに対する理解や人員の不足を挙げる声が多かった。

 調査は2020年度冬のスポット価格高騰を踏まえアンケートを行ったもので、171社(小売156社、発電37社)が回答した。31日の制度設計専門会合(座長=稲垣隆一弁護士)で報告された。

 調査ではスポット市場での調達比率が高いほど定量的にリスクを把握できていない事業者が多かった。市場リスクを把握する指標として、電力先物価格と先行きの相場観を示す「フォワードカーブ」のいずれも参考にしていない事業者も3割以上存在した。

 現時点で小売事業者によるヘッジ市場の利用は先渡しが10%、電力先物が東京商品取引所で12%、欧州エネルギー取引所(EEX)で3%、BL市場が22%にとどまる。ただ、それぞれ25~37%の事業者は利用に向けて準備中と回答。20年度冬の価格高騰を踏まえて関心が高まっている状況もうかがえる。

 電力先物については事業者から勉強会や手数料の引き下げ、年度をまたぐ会計処理(ヘッジ会計)の明確化などをニーズに挙げる声も多かった。

 先渡し市場には商品の時間区分やエリアの見直し、シングルプライスオークションの導入といった要望があった。BL市場には預託金の見直しや入札日程の追加を求める意見が寄せられた。

 電力・ガス監視委は調査結果を踏まえ、各市場を運営する取引所にニーズに合わせた対応を要請。年内にリスク管理の指針策定を目指す経済産業省・資源エネルギー庁に対しても、実態に即した検討を求めた。

電気新聞2021年6月1日