[ウクライナショック]識者の見方/袴田 茂樹氏

日本も相応の負担覚悟を


袴田 茂樹氏

 

袴田 茂樹氏
青山学院大学・新潟県立大学名誉教授


 

 ロシアがウクライナに求める非武装中立とは、親ロシア政権の樹立のことで、ロシア軍によって保護された傀儡政権である。その達成まで軍事行動を続けるとしており、問題は簡単には終結しない。

 G7は厳しい経済制裁に踏み切ったが、今回のウクライナ侵攻が始まる前からロシア経済は悪化していた。2014年の「クリミア併合」後、対露制裁も奏功してロシア経済は悪化し、国民生活の物価上昇率は公的発表のインフレ率よりはるかに高い。金融制裁が強化されればロシアの対外貿易は極めて困難になる。

 エネルギー分野を含めロシア側の報復措置も懸念されるが、ロシアと経済交流が強かったドイツも態度を変えた。自国経済の大きな痛手を覚悟してG7の強い対露制裁に加わる姿勢に転換した。

 日本の対応も問われる。従来は領土問題解決を念頭にむしろ対露協力を進め、痛みが出ない形でG7に名目的に協力していた。今やそのような対露対応はあり得ない。ロシアの軍事侵攻はウクライナに対する領土の侵害であり、G7でウクライナと同じ立場にあるのは日本のみだ。だからこそ対露制裁には真剣に対応する必要があるが、自らも相当の痛手を覚悟すべきだ。

(談)


電気新聞2022年3月11日