車載向け全固体電池の実用化に向けた動きが加速している。パナソニックは9日、ファインセラミックスセンター(JFCC)などと共同で、充放電中のリチウムイオンの動きをナノ(10億分の1)メートル単位かつリアルタイムで観察できる技術を開発したと公表。従来の観察技術を改良し、画像解析を高精度かつ即座に行うことに成功した。全固体電池の充放電の詳細なメカニズムと劣化要因が明確になり、高性能な電池を設計する際などに役立つ。

 今回の技術開発には名古屋大学も参画している。全固体電池は携帯用電子機器やIoT(モノのインターネット)用機器向けの薄膜型と、電気自動車(EV)やハイブリッド車などに用いる大容量のバルク型に分かれる。これらを実用化するには電池内部のリチウムイオンを高速に移動させ、充電時間の短縮と出力を高める必要がある。だが、リチウムイオンの移動に伴う抵抗値が従来型の電池と比べて高く、それらが実用化への課題となっていた。

 パナソニックやJFCCなど3者は2018年9月に確立した、リチウムイオン電池を充放電させながら電池内部のイオンの挙動が見られる「オペランド観察技術」を改良。今回、バルク型の全固体電池を充放電させつつ、正極内のイオン分布の様子を観察することに世界で初めて成功した。

バルク型全固体電池内部のリチウムイオンのリアルタイム観察

 通常の透過電子顕微鏡では、イオン分布のリアルタイム観察は困難だったが、「スパースコーディング」と呼ばれる画像解析の手法を適用。解像度を高くするとともに、画像1枚の撮影時間を15分から30秒に短縮した。

 JFCCナノ構造研究所電子線ホログラフィーグループの山本和生主席研究員は、「今後は最も抵抗値が高い正極と電解質の界面(境目)でのイオン分布を観察できるように研究を進める」と述べた。

 全固体電池は電解質に固体電解質を使用した二次電池。可燃性の液体を使う通常の二次電池と異なり液漏れや燃焼の恐れがなく、安全性に優れた次世代電池として研究開発が進んでいる。

電気新聞2020年7月10日