架空送電線工事業界が、全国一斉休日を2020年度から導入する。鉄塔基礎工、組立工、架線電工が携わる建設・修繕工事を対象に、原則として10月第2週の「スポーツの日」(体育の日)を含む土、日、月曜日を3連休とするほか、毎月第2週の土、日曜日を2連休とする。休日を固定化し、現場施工を行う工事会社の作業員が休みやすい環境を整備することで離職を防ぎ、将来の施工力を確保したい考えだ。
 
 ◇停電作業に配慮
 
 全国一斉休日の導入は、送電線元請け工事会社らで構成される送電線建設技術研究会(理事長=松山彰・シーテック社長)の要望に応じ、電気事業連合会が検討した。昨年2月に開かれた、電力各社と送研役員が懇談する評議会で議題に上ったのが発端だ。昨年12月、電力10社とJパワー(電源開発)の連名で来年度からの実施が送研各支部へ通知された。今年4月の工事件名から適用するが、支障がなければ、それ以前から実施可能だ。

 2020年度は東京五輪・パラリンピックの開催によって、スポーツの日は特例として7月24日となっているが、10月第2週は土日月の3連休とする。今後、毎月第2週の土日がスポーツの日を含む3連休と重なる場合は、3連休に包括される。

 この他、一斉休日明けの初日や月曜日に停電作業を原則的に設定しないことも提示。現場が遠距離にある場合、休日中に現場に乗り込むのを避けるためだ。また、電線張り替え工事のように、片側回線の停止期間がおおむね20日以上となる長期停止工事で片側交互停止を行う場合、停止切り替えの間を原則3日以上空け、停止切り替えの間に土日に限らず休日2連休を設定する。

 ただし、送電線がつながる需要家など顧客側の都合や、潮流や故障対応など系統状況により土日に停止作業を行う場合もある。やむを得ず一斉休日期間に作業を行う場合は、現場ごとに別の日に一斉休日を設定する補足事項も設けた。
 
 ◇他部門の協力も
 
 送電工事の休日確保策は、これまでも各電力会社で個別に対応していたが、他電力エリアが稼働していると、日給・月給制を採用する工事会社の作業員がそちらへ移動してしまい、施工力に偏りが出る可能性があった。全国で一斉休業することで確実に休暇を取り、労働環境を改善することで業界の魅力を向上する。

 電力社内の他部門への理解も浸透させる。各電力の工務部門が、需要家らと接する営業部門や停止期間を調整する系統運用部門に説明し、協力を得ている。

 送電業界は、今後の高経年設備の更新期に備え、施工力の確保が課題となっている。熟練技能者の高齢化が進んでいるほか、決まった休日が確保できないため、若年層が離職するケースもある。

 将来の担い手確保に対する懸念は受発注者で共通する。全国統一で休日を固定化することで、業界大で労働環境改善を進めている姿勢を示し、社会的な理解浸透も図る。

電気新聞2020年1月17日