再エネの有効活用に向けた協定書を取り交わした原田社長(右)と村井知事(8日)
再エネの有効活用に向けた協定書を取り交わした原田社長(右)と村井知事(8日)

 
 東北電力が、VPP(仮想発電所)を巡り自治体との連携を広げている。昨年4月に仙台市と連携に関する協定を締結したのを手始めに、福島県郡山市、新潟市、宮城県ともタッグを組んだ。社内体制も強化。7月には新たに「デジタルイノベーション推進室」を創設した。自治体と連携した実証試験を通じて新たなビジネスモデル確立を目指すとともに、地域にとってもメリットが生じるような「ウィンウィン」の取り組みを展開していく方針だ。
 
 ◇設備保全に利点
 
 東北電力は昨年4月にVPP実証プロジェクトを始動させた。このプロジェクトの中で重視しているのは事業領域拡大とともに、地域・法人・家庭と東北電力が相互にメリットを享受できる関係だ。

 自治体との連携第1弾となった仙台市は、東日本大震災を契機に学校などの公共施設に太陽光発電や蓄電池を設置している。これらは災害時の非常用設備のため、蓄電池にためられた電気を放電する機会が少なく、劣化を招く原因になる。市としては、こうした非常用設備を東北電力のVPPリソースとして提供することで、設備の長寿命化が図れる利点が生じる。

 震災の教訓を踏まえ、再生可能エネルギーの普及や地域の防災力向上を目指そうとする自治体の思惑と、東北電力によるVPP実証プロジェクトは「相性」が良い。仙台市に続き郡山市、新潟市とも連携協定を締結。今月には宮城県との間で協定を結んだ。
 
 ◇P2Pも検証へ
 
 宮城県と組んで展開する実証事業では、VPPだけでなく、需要家同士が仮想的に電力を直接取引するP2P(ピア・ツー・ピア)の検証に踏み込む。7カ所ある合同庁舎に設置されている太陽光発電による発電量と、庁舎で使う電力需要をマッチングさせ、庁舎間でのバーチャルな直接取引を可能にする。

 協定締結式で原田宏哉社長は「新たなサービスの可能性追求へ大切な取り組み」と意義を強調。デジタルイノベーション推進室の担当者は、P2Pのプラットフォームを提供することで、新たな収益源をどう確保していくかを検証していくと話している。

電気新聞2019年8月15日