経済産業省は14日、ウクライナ危機や3月22日の電力需給逼迫を踏まえ、エネルギー安全保障、安定供給確保に向けた政策の方向性を確認した。2050年カーボンニュートラルを目指しつつも、中長期の脱炭素に向けたトランジション(移行)の前段階に「脱ロシアのトランジション」が必要と整理。新たなトランジションが加わることで、一層のエネルギーコスト上昇が懸念される。先進7カ国(G7)のうち1次エネルギー自給率が低い日本やドイツ、イタリアなどは厳しい状況に置かれることになる。
14日の総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)と、産業構造審議会(同)の合同会合で議論した。安定供給確保の視点をクリーンエネルギー戦略に反映する。
ウクライナ危機などを踏まえ、オイルショック後以来の大胆な構造転換を進める。資源燃料分野はロシア以外の調達先の多角化を図るほか、主要消費国と連携し資源国への増産を働き掛け「脱露トランジション」を進める。
一方、中長期的な脱炭素やエネルギーコスト低減の具体策は不透明感が漂う。エネ庁は会合で、8日の岸田文雄首相の会見を引用し「再エネ、原子力などエネルギー安保及び脱炭素の効果の高い電源の最大限の活用」と記載するにとどめている。
大場紀章・ポスト石油戦略研究所代表は、ウクライナ危機を踏まえ「需要側の脱炭素政策は基本的に変わらないという認識でよい。一方、供給側の脱炭素は大きく見直す必要がある」と強調。欧州のLNG導入増を見据え「エネルギー構造が日本型に近づく」と指摘し、欧州との共同備蓄の進展などを予測した。この他、複数の委員が原子力の重要性をあらためて訴えた。
電気新聞2022年4月15日
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