忌避行動評価法で使用するケージ。カラスと鳥害対策品などを入れ、カラスが警戒を解くまでの時間を計測する

 電力中央研究所は、電力設備などで使用される鳥害対策品の効果を定量的に評価する手法を開発した。ケージ(おり)や心電図など専用器具を使ってカラスの忌避行動や生体反応を計測し、対策品の効果時間を比較する。研究機関による第三者評価によって対策品を検証し、電力会社の設備保守の効率化やメーカーの製品開発に貢献していく。

 電中研は2020年3月に「忌避行動評価法」、18年に「生体反応評価法」を開発。この2つの評価法を用いた試験を20年4月から始めた。

 忌避行動評価法は横6メートル×奥行き4メートル×高さ2.5メートルのケージにカラス1羽と餌、水、対策品を入れ、カラスが対策品に警戒を解くまでの時間を計測するもの。試験時間は1羽につき12時間。電中研で飼育するカラスの中から3羽を試験に用いて、その反応を記録する。

 電中研では50種ほどの対策品を評価する予定で、現在までに10種類の比較を完了。カラスが対策品に警戒を続ける時間や、反応の固体差などのデータを蓄積していく。

 一方、生体反応評価法はカラスに心電図を取り付け、音などを使った対策品への生体反応を見える化。試験ではカラスが警戒する音を一定時間聞かせた後に、別の音に切り替えた時の心拍数の変化を記録した。試験では徐々に心拍数が低下し、音に対する慣れが見られたが、別の音に切り替えたところ、心拍数が急上昇した。

 この結果について、電中研の白井正樹主任研究員は「カラスは聴覚の刺激の切り替わりを認知していると思われ、複数の音や光を利用した対策品は効果が長期間継続する可能性がある」と指摘。今後は音を流すタイミングを不規則にしたり、光を用いた対策品の評価も進めたりするなど検証内容を拡充するという。また、24年を目標に忌避行動、生体反応を組み合わせた評価法の構築を目指すとした。

 電力設備に被害を及ぼす鳥類はカラスの他に、サギ、ムクドリ、ハトなどが挙げられる。これらの鳥類による停電やふんなどの被害が配電、送電、変電設備で発生しているが、鳥の種類や被害ごとに適した対策は異なる。

 電中研によると鳥類の営巣撤去数は毎年、全国で20万個を超えており、白井氏は「電力会社でも対策品の選定には苦慮している」と話す。

電気新聞2021年6月18日