講演「技術革新が導く電力業界の変革と新たなビジネスモデル」

2017/08/30

小倉氏27830497743684.45-599a4d9a

◇人と技術の融合目指す

 インテル インダストリー事業本部エネルギー事業開発部長
 小倉 慎太郎氏

 近い将来にAIによる業務の代替やビジネスの変革、労働従事者の世代交代が予想され、第4の産業革命とも呼ばれる状況も起こっている。しかし、これらは始まりにすぎず、今後あらゆる業界でイノベーションが起こる。

 インテルが考えるイノベーションは必ずしも単なる自動化を目指すものではなく、従来のビジネスとデジタル技術の融合だ。リアルタイムのデータ活用や効率化・合理化、クラウドによるオンデマンドなサービス、セキュリティーやプライバシーの確保、つながりのある体験、労働能力の拡張などを実現するデジタル技術が新しいビジネスを支える。

 インテルはクラウドやサーバー、メモリー、FPGA(書き換え可能なCPU)などの技術を生かし、業務に最適なICT利活用を提案できる。近年はIoTに注力し、技術の標準化団体で主要メンバーも務めている。今後生まれる製品のロードマップを提示可能だ。また、中立的な立場で多様なパートナーとの連携や実証実験をサポートしたり、海外事例を紹介したりもできる。

 電力業界におけるデジタル化は、発電コスト・SCM(サプライチェーンマネジメント)の最適化やスマートグリッド、需要予測など多岐にわたり、相互に関連がある。加えて保守コストの削減やワークスタイル変革による業務効率化、スマートホームのプラットフォームを活用した新規収益源の創出も実現できる。

 具体例として、独エーオンとの間ではテーマをいくつか設定し、5年間で電力系統の設計から現場作業におよぶデジタル化を進めている。英国の送電系統運用者・ナショナルグリッドとは供給支障の予測と防止に取り組む。携帯型のゲートウエー端末を活用し、現場作業の安全確保・効率化を図った事例もある。

 新たな取り組みとしては「エネルギーコレクティブプラットフォーム」がある。家庭にエナジーゲートウエーを設置し、電力消費などのデータ収集や太陽光発電、蓄電池などを制御する。電力会社は顧客の電気の使い方や潜在的なニーズなどを分析し、新しいサービスを提供できる。既に欧州で「リアルバリュープロジェクト」という実証を進めている。

 デジタル化による産業の変革が進んでいるが、人を中心とした従来ビジネスとの融合がイノベーションをもたらす。インテルは今後も課題解決と新ビジネス創出のため技術革新を進めていく。

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