[ウクライナショック]識者の見方/秋山 信将氏
ガス高騰、欧は許容可能か
秋山 信将氏
一橋大学国際・公共政策大学院教授
ロシアのウクライナ侵攻は、いかなる政治的圧力も、決心を固めた独裁者の武力行使を押しとどめることができないことを示した。ウクライナ側の抗戦士気は高いと伝えられている。欧米としては短期で決着がつき、ロシアが力ずくで自らの利益を実現し、それが「新しい日常」となることは許容できない。
しかし、紛争長期化の場合に気になるのは、エネルギー政策の行方だ。欧州は天然ガスの40%をロシアに依存する。しかも、その代替となる可能性がある石炭も50%がロシアからだ。再生可能エネルギーの利用が進んでも、ロシアへのエネルギー依存構造は容易に解消できないだろう。
ただ、このような依存状態は欧州側のみに問題をもたらすわけではない。ロシア側も外貨収入の多くを資源取引に依存している。欧米は、軍事力による反撃なしでも、経済制裁の拡大・長期化がプーチン大統領やその周辺のオリガルヒへのダメージとなり、さらに内心では開戦に納得していない市民が経済困窮によって政府への反感を強めることで、プーチン大統領の独裁体制に動揺が走るというシナリオを描いているように見える。
ポイントは欧州の市民が、高騰するガス代など、そのコストを払い続けることに耐えられるかであろう。
(談)
電気新聞2022年3月2日