シスコシステムズと日立製作所は協業し、変電所の保護制御をデジタル化する。メタルケーブルから光ファイバーケーブルに置き換えることで本数を減らし、設置工事や維持管理の負担を軽減できる。さらに、標準技術を利用することで、調達のしやすさも向上する。シスコの中川貴博・IOT事業部担当部長と日立の吉岡秀幸・エネルギーソリューション本部送変電制御システム設計部部長は対談で、デジタル変電所を電力会社や鉄道事業者、大規模工場などに幅広く提案していく姿勢を示した。(肩書は取材時)
 
◆光ファイバーケーブル導入
 ◇保護と制御の通信、広範にデジタル化/国際標準の信頼性担保
 シスコと日立は、保護と制御のそれぞれの通信をデジタル化する。系統事故発生時に変電所の機器を安全に系統から切り離す保護装置と、主機の制御装置には多くのメタルケーブルがつながる。大容量通信が可能な光ファイバーケーブルを導入し、メタルケーブルと比べて本数を大幅に減らす。
 遮断器や変圧器といった各機器の状態や異常信号は中央監視制御装置で集約される。中央監視制御装置に送信するステーションバスだけでなく、各機器の保護や制御のために通信するプロセスバスまで対象に、両社はデジタル化する。機器に直結する通信データは機器の保護演算に使用するため時間制約が厳しく、プロセスバスにはより高い信頼性が求められる。国際標準のIEC 61850に準拠し、品質を担保する。
 日立は、保護リレーや制御ユニットごとに設置されているインテリジェント電子装置(IED)を束ねた集約型保護制御システム(CPC)を開発した。デジタル化に伴う演算装置の増加を防ぎ、コストを抑制する。適切な順番で演算処理できるように設計し、遮断器などの各種機器に円滑な指令を出す。
 複数のIEDを束ねたことで、CPC2系列設置にも対応できるようになり、変電所の冗長性を高める。装置の点検や異常によって1系列が停止しても、別の1系列で変電所を稼働できる。停止期間を短縮し、電力の安定供給に貢献する。

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