第69回「電気のある生活」写真賞 入賞作品が決定

 第68回「電気のある生活」写真賞(富士フイルムイメージングシステムズ後援、全日本写真材料商組合連合会協賛)の入賞作品が決定しました。

第69回「電気のある生活」写真賞・最優秀賞「寄り添って」(足利義信氏・岩手県・66歳)

「寄り添って」足利 義信(岩手県)

 全国581人から1,680点の応募がありました。最優秀賞には足利義信氏(岩手県・66歳)の「寄り添って」が選ばれました。また特選には、中根英治氏(埼玉県・49歳)の「都心のスケートリンク」、準特選には五十嵐敏紀氏(東京都・81歳)の「愛車に充電」と、河本眞一氏(東京都・73歳)の「交差点の中の都電」が、それぞれ選ばれました。このほか入選20点・奨励賞20点が選ばれ、各賞には電気新聞賞と富士フイルム賞がそれぞれ贈られます。
 今回は応募者数が581名、応募点数が1,680点。年代別では70歳代の応募が40.4%と最も多く、次いで80歳代が21.3%で、退職後の趣味に写真を楽しんでいる世代が全体の半数以上を占めました。男女比は男性86%、女性14%でした。
 「電気のある生活」写真賞は1955(昭和30)年から始まり、国内でも有数の歴史がある写真コンテストです。当初は「電気人懸賞写真」として創設され、第27回から名称を現在のものに変更しました。過去には日本大学芸術学部写真学科を創設した金丸重嶺氏、日本を代表する写真家の一人である木村伊兵衛氏も審査員を務めています。
 選考は2023年1月24日に行われ、木村惠一(日本写真家協会名誉会員)、榎並悦子(写真家)、早田敦(電気事業連合会専務理事)の3氏が審査を行いました。

>>入賞作品一覧はこちらからご覧いただけます。


【最優秀賞・喜びの声】平和祈り照らす「奇跡の一本松」足利義信さん

 「電気のある生活」写真コンテストに20年応募し、初めての入賞が最優秀賞とのお知らせを頂き、うれしさのあまりそばにいた妻と年がいもなく抱き合いました。カメラを持って今年で28年、ジャンルを問わずに撮り続けています。
 その中で、3.11東日本大震災が発生。私は沿岸被災地から車で30分ほどの内陸で生活していますが、私の地域もライフラインが途切れるなど被害を受けました。このような状況下でも「記録として残して」と、被災地のカメラ仲間から声を掛けられ何度となく足を運び、数え切れないほどシャッターを押しました。時間と共に日常生活は戻りつつあります。
 ロシアのウクライナ侵攻が始まり、その光景をテレビ報道で目の当たりにしました。戦争状態になかなか終わりが見えない中、東日本大震災で被災した陸前高田市の「奇跡の一本松」をウクライナ国旗色にライトアップすると知り、私も世界平和を願って撮影に出掛けました。その中の一枚が今回の最優秀賞に選ばれ、感無量です。
 関係者の皆さまには大変感謝しております。ありがとうございました。


【講評】時代捉えた力作ぞろい/木村 恵一氏(日本写真協会名誉会員)

 全般的に、前回と比べて応募作品数が少なかったこと、若い世代からの応募が少なかったことは残念だが、入賞はいずれも時代を切り取った作品ばかりだ。
 最優秀賞の「寄り添って」は、東日本大震災から10年あまりがたった岩手県陸前高田市からウクライナを応援しようという祈りの思いがあらわれている。震災遺稿である「奇跡の一本松」「ユースホステル」を青と黄色の明かりでウクライナカラーにライトアップしている。震災の記憶を残し続けねば、という思いも強く伝わってくる。電気には、生活の利便性という側面だけでなく、色でメッセージを伝えられるということを認識させてくれた一枚だ。
 特選の「都心のスケートリンク」は東京駅を真正面から移したものだが、とても日本とは思えない光景。ウィズコロナの中で、丸の内ににぎやかさが戻ってきたことが伝わってくる作品だ。
 準特選の「交差点の中の都電」は、東京に唯一残る都電荒川線が最も格好良く撮影できる場所から、往来する車の光跡で都会の華やかさを表現している。同じく準特選の「愛車に充電」は、「出勤前にまず充電」する光景が日常になっていることに驚きを感じさせる一枚。雪がさんさんと降る中での充電風景というのも良い。
 電気が日常に入り込みすぎているためか、新しい切り口を探すのは難しいかもしれない。しかし、私たちがまだ気づいていない側面もきっとあると思う。そうした世界にタッチするような作品を今後、期待したい。

【講評】「気付き」与える作品を/榎並 悦子氏(写真家)

 「奇跡の一本松」とユースホステルをライトアップした最優秀賞「寄り添って」からは、東日本大震災の被災地である岩手県陸前高田市から、ロシアによる侵攻に苦しむウクライナへの思いが伝わってくる。祈りのメッセージを電気の明かりで伝えるすばらしい1枚だ。
 特選の「都心のスケートリンク」は、やや上からのアングルで撮影しており、構図も良い。準特選の「交差点の中の都電」は静と動を光で表現するなど絵心がある。「愛車に充電」は秋田県横手市の朝の一場面だが、雪深い地域ではガソリンスタンドに行くのが大変だということを気付かせてくれた。
 この写真賞は、電気が持つ様々な側面への「気付き」を与えてくれるコンテストだと思う。前回の最優秀賞が、ダムのトンネル工事を写した作品だったように、今回はウクライナへのメッセージを電気の明かりで伝えられることを教えてくれた。次回以降も固定観念にとらわれない作品を期待している。

【講評】にぎわい復活 鮮やかに/早田 敦氏(電気事業連合会専務理事)

 2022年を振り返ると、ロシアによるウクライナ侵攻が最大の出来事。その点からも最優秀賞「寄り添って」はメッセージ性が強く、印象に残る作品だ。
 今回の審査に当たっては、ウィズコロナが浸透しイベントやお祭りなどにぎわいが戻りつつある中で、そうした状況を写す作品がないかどうか、という視点で臨んだ。その意味で特選「都心のスケートリンク」はマスクを着けながら楽しむ人々の様子をうまく切り取っている。
 私自身にとって飛鳥山公園は、桜の名所としてなじみ深い場所。準特選「交差点の中の都電」を見て、新鮮な印象を受けた。「愛車に充電」については、雪深い土地柄で電気が役立っていることを写している。
 私ども電気事業者が目指す2050年カーボンニュートラルには、電荷が不可欠だと認識している。今までにないような「新しい電気の使われ方」がこの先、増えてくるのではないだろうか。今後は、そうした切り口にも期待したい。